アスタラビスタベイベー

MINAMATAーミナマターのアスタラビスタベイベーのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.2
素晴らしい作品。期待してなかったから余計に感動した。

水俣病が全国そして世界に認知されて、企業が垂れ流した排水による公害であると歴史に記録された。その過程は、ただ役所に訴えて済む様な簡単なものではなく、筆舌に尽くし難いほどの困難の中で地元民が勝ちとったものであったのだと知る。

「排水された水銀は100万分の1だし、公害を訴えている連中も日本という大きな産業の100万分の1に過ぎない」という様な理屈をチッソの社長が吐き捨てるように言っていた。でもこれはすごく大事なテーマだと思う。誰もが1回真面目に考える必要があるテーマ。
現代の我々にはこの公害問題が歴史的事実として認識されているから、市民側に立って政府企業の隠蔽を許さないと言えるけど、リアルタイムで起きていたらどういう反応をしていたのかな?
利権欲しさに市民団体が暴れていると中傷したか、同情して次の日には無関心になったか、あるいは全体の利益のためのわずかな犠牲だと片付けたか。
恐らく水俣病を始め公害と闘ってきた多くの市民団体に対して日本の世論はあまり同情していなかったのではないかな。なぜなら映画にあるTIME誌の報道が事態を好転させたということそれはつまり外圧で変わったということだから。
さらに市民団体の苦しみは内部崩壊にある。資金がない資金が欲しい。誰がどこまで保障を求めて、どこかで折り合いをつけるべきのか。それぞれが違うから簡単に瓦解する様に思えた。その辺りは今回の映画ではあまり表現されてなかったけど、どの様に乗り越えたのか。
この映画では企業の隠蔽、暴力、破壊が主に扱われていて、それの対抗策が写真。そしてヒーローとなった写真家。彼がヒーローになるまでの葛藤も見どころ。