オンライン上映会のお題。
作品を通じて知らなかった事実を知れてよかった!という映画は数あれど、そのことと作品の評価はまた別物。
恥ずかしながらたぶん見た事もなかった有名な1枚の写真「入浴する智子と母(Tomoko and Mother in the Bath)」が本作の鍵になっており、実際ジョニデはこの写真に惚れ込んで映画化を熱望したとのこと。
写真を撮ったのはユージンスミスというアメリカの戦場カメラマン。奥さんは日本で知り合ったアイリーン美緒子。
アイリーンによって何故か長らく封印されていたこの写真を映画化に際しあらためて公開したことで、本作の伝えたいことがより明確になった気がする。逆にこの写真がなかったら、なおさら軸の弱い映画になっていたかもしれない。
というのも、真田広之や浅野忠信(みなさんSHOGUN観てますか?めちゃくちゃハマってます笑)らMARVELでも活躍した日本人俳優の貫禄、相変わらずの國村隼、美波も岩瀬晶子もとても良くって、演技に支えられて観ていられるのだけれど、惹き込まれるほど面白い映画かと言われるとどうにも淡々としている。
これはおそらく元々ユージンスミスがこういう人なのだろう、内に熱いものを秘めている人をエネルギッシュに描写するほど難しいものは無い。
カメラはめっちゃ美しく、音楽は坂本龍一。ここも文句の付けようがないだけに、なんとも惜しい。
國村隼が隠蔽工作するのも、放火の件も、映画化にあたり創作された(つまり史実は異なる)そうで苦労の跡が伺えるし、そのことを否定するつもりは無いのだけれど、前半、事実を知りゆく過程のサスペンス感に比べるとラストに向かって尻すぼみになった感は否めない。
アメリカ人お得意の「白人の救世主」的な構図に陥らないようにするためには、あのような展開にせざるを得なかったのかもしれない。邪推かな。
エンタメに振ることで史実をあらためて掘り起こし、そしてジャーナリズムによって世界を変える意義を唱えることは素晴らしい。
されど、これならドキュメンタリーでいいやん、と言われてしまうようではもったいない。
付けたスコアは低いけれど、人には自信を持ってオススメできる、でもめっちゃ面白い映画かと言われると微妙。