カリカリ亭ガリガリ

夜明けを信じて。のカリカリ亭ガリガリのレビュー・感想・評価

夜明けを信じて。(2020年製作の映画)
4.0
本の虫だった満島真之介にソックリの童貞が図書室で一回だけ会った女子に「きみは風のようだ」みたいなキモいポエムを13通送り付けて、その子がドン引きして失恋した途端にしゃべる光の玉が見えるようになった「と思い込んで」その光(の下に「仏陀」とか「イエス・キリスト」とか「坂本龍馬」とかテロップが入る)の声をメモ帳に書いたり自分の太ももに書いたりしながら「俺は選ばれし者」という自己肯定感を高めていきつつ、入社した会社でドチャクソステレオタイプなパワハラを受けつつも精神力が強いのでビクともしないフィロソフィカルゾンビと化した童貞は欲求不満と光の玉の声と上司の肩で「クルシメ!シネ!」とか言ってる悪霊のオーラのせいでスゲエ仕事が出来るビジネスマンとなり、出世してニューヨーク支社に一年間行って来いと言われて「教えを説く時間が無くなっちゃうかも」と「一瞬」心配になるが速攻でニューヨーク行って、速攻で信じられないくらいのパワハラに遭って、それでも心が無なのと「俺は選ばれし者だから人よりも頑張らなきゃ」とめっちゃ、めっっっちゃ頑張る童貞の勇姿に合わせて「おれはージャパニーズタイガー!負けないぞー!あいらぶにゅうよおーく!」とアホみたいな曲が被さりながら、これみよがしに、80年代の実景にこれみよがしに映りまくる世界貿易センタービルのしつこさの果てに、結局スゲエ頑張って認められて、帰国して急に半沢直樹みたいな会社モノになって、顔芸も謝罪も土下座もないので全然半沢直樹ではないんだが、とにかく主人公がガミガミうるさく反抗し続けているとトントン拍子で事が全て上手く行って、光の声を書き留めた本を出して、ついでにキモポエムも自費で出して、その最中で千眼美子からめちゃくちゃ惚れられて、でも男女の恋愛よりも人類のための幸福、それを説く存在としてぼくは立ち上がるぞ!と思い立つきっかけがプレステ2みたいな悪魔との対決で、彼の頭上から出るオーラがブッ刺さって悪魔は撃退され、童貞は童貞のまま東京ドームで『20世紀少年』のともだちみたいに立ち上がる!!!

は?

黒澤明『生きる』方式で主人公を知る人々が回想していく構成や徳島県の実景の美しさなど、いつものハッピーサイエンスフィルムよりは割と正統に作ってる感じは否めないけれど、童貞が欲求不満で謎の光を幻視するようになって、その幻聴を本にして商売してるじゃん、いや詐欺じゃんと思ったけれど、悟りの才能、無い?

パワハラとかイジメとか、その加害側への一切の責任追及が無くて、自分は人よりも優れているからこの逆境に耐え抜くのだ、と被害者側が「男なら負けるな精神」で無心で乗り切ろうとする倫理観が全く信用ならなかった。
あとモテキ自慢やめてよ。「恋愛よりも人類のための孤独を選ぶ」みたいな、そういう比較している段階で欲求に揺れているのでは?自意識過剰では?ってか主人公の机の上に千眼美子のテメエで撮った写真が飾ってあったよね?それは気持ち悪いぞ〜

相変わらず、監督クレジットの後に川のように流れる大量大量大量の協賛クレジットは圧巻。これはやっぱりハッピーサイエンスフィルムの醍醐味。
あとカメオ出演の大川隆法(医者役)が酔っ払いのオッサンでしかなくて、それは可愛かった。