たいよーさん

あの頃。のたいよーさんのレビュー・感想・評価

あの頃。(2021年製作の映画)
4.3
しばらく揺るがなそうなくらいの2021年ベスト。まさに、"泣き笑い"。誰にでもあるであろう、"推し"という名の愛は、揺るがない青春の群像として残ってゆく。


主人公の剱は、バイトとベースの日々に虚無感を覚えていた。そんな時に出会ったあややのPVに感動を覚え、同じハロプロのオタクたちと共に、青春を謳歌してゆく。続く日々に変わってゆく剱は、出会いと別れを通じた新たなる自分に気づく。そんなある日…。

序盤では、剱がハロプロを通じて、自身の逃げていた日々に向き合ってゆく。その過程に笑いっぱなし。バカでネット弁慶なコズミンや、リーダー格のロビを筆頭に、ハロプロへの愛が止まらない。それに対して、ハロプロを知らずとも困らないリードがしっかりとされており、彼らの原動力として形容すれば大丈夫なように脚本がリードされている。視点が客観的=オーディエンスとして機能した構成もあるだろう。仲間と出会ってから起こる、恋の苦味や友情の熱さ。仲間という名の青春のギアは全快となり、可笑しくもかけがえのない一瞬が過ぎてゆく。

同時に、彼らの人生も照らし出され、社会活動への分岐も映し出される。剱もベースへの未練を引きずっており、ライブハウスの仕事を始める。日々の充実を感じた頃に起こる、悲痛な知らせ。推し活への思いが離れつつあるように見えながら、人生のピースとしてかけがえのないものが一生モノへと形を変えてゆく。その輝きが一杯になるとき、私は涙が止まらなくなった。

重厚なキャスティングが魅せる熱くて愛らしいキャラクターと、巧みな脚本。そして、長谷川白紙による音楽がなにより効いていて、私をスクリーンに映る彼らの感情への熱量を共に体感させるように煽動する。「ハロプロによる青春の奇蹟」を知っているハロプロファンが、とても羨ましい。


ハロプロの音楽に気がつけば、泣いている自分がいた。青春の群像がいかに一瞬でも一生のモノなのかを感じさせてくれる。今泉力哉監督だからこそ出来る、人と人が生み出す暖かな雰囲気。こんなに笑い泣きするなら、バスタオルを持っておくべきだった。笑

2021/1/18 1回目@FSスペース汐留
2021/2/19 2回目@MOVIXさいたま
たいよーさん

たいよーさん