マヒロ

ラスト・ショーのマヒロのレビュー・感想・評価

ラスト・ショー(1971年製作の映画)
3.0
テキサスのある田舎町で暮らすソニー(ティモシー・ボトムズ)とデュエイン(ジェフ・ブリッジズ)は遊びたい盛りの青年だったが、町の娯楽といえば小さな映画館とビリヤード場くらいのもので、常に不満を抱えていた。閉塞的な町の状況は二人だけでなく他の若者や大人達にも暗い影を落としており、徐々に人間関係にヒビが入っていく……というお話。

ど田舎で過ごす青春を描いており、白黒の画面や映画館が出てくることから、『ギルバート・グレイプ』みたいなノスタルジックな話なのかと思っていたら、どん詰まりの状況でジタバタしてみるが何も変わらない……という底なし沼のようなどんよりとした生活を淡々と見せていく、絶妙に厭さのある作品で驚いた。

何もやることがない若者達は当然の如く色恋に走るが、小さなコミュニティで惚れた腫れたとやっているうちにグズグズの人間模様が形成されていき、ついには取り返しがつかないことになっていく様はなかなかの修羅で、いかにも70年代初頭の映画らしい厭世観で、あんまりノスタルジーにどっぷり浸った作品が好きではない自分にとってはちょうど良い塩梅。
子供達が田舎の空気に呑み込まれて堕落していく中で、それを忠告する大人という構図になっていくのが面白い。ソニーとデュエインの両方に想いを寄せられるジェイシー(シビル・シェパード)も堕落しつつある子供の一人だが、エレン・バースティン演じるその母親は、自身の境遇を顧みて「こんなところで腐ってないでとっとと出てきな」と釘を刺すが、普通こういう田舎の親って保守的な考えで子供が出ていくことを嫌がることが多いので、なんか新鮮だった。

正直面白いかと言われるとそうでもなくて、ドロっとした人間模様をまざまざと見せつけられて何とも言えない気持ちにさせられる映画ではあるんだけど、その妥協なしの生々しさはこの時代ならではの良さがあるかなとは思えた。

(2021.261)
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