ちろる

おらおらでひとりいぐものちろるのレビュー・感想・評価

おらおらでひとりいぐも(2020年製作の映画)
3.6
家の中で笑い声、叫び声が響いていたのも遠い昔、今は1人。いつ孤独死してもおかしくない。

気がついたら一週間だれとも話していないといつ事もある。
桃子は暇を持て余しながらいつのまにか心の声の3人と会話をしていた。

『おらだばおめぇだ』
この3人は桃子が寂しさから生んだ分身のような存在。

喋る必要ないから、喋らなくななる。
黙ったままでいるとそれがクセになる。
この家は寂しさで賑やかだ。

身ひとつで、逃げるように岩手から東京にやってきた。東北弁を恥ずかしげもなく話す同郷の男に心惹かれ、付き合いやがて結婚した。
平凡だけど、2人の子供を育て穏やかな生活を営み、これから夫婦水入らずの平穏な日々を過ごそうと思った矢先、突然夫に先立たれ途方に暮れていた。
少しばかりの「もしも・・・」を想像したりもするが、ここまで選んできた道は全て彼女のもの。
寂しさを含めて全て受け止めて「おらはこのまま生きていくからな」という力強さも見え隠れする。

沖田修一監督らしい、ほのぼのとしたユーモアとやさしさが満ちた視点。
起伏がないけど、クスッとさせられる。
「喪失感」を描いているのに悲壮感がないのは、演出と、田中裕子さんの飄々とした演技のおかげだろう。

誰もが立ち向かわなければならない老後。
どのような形にせよ孤独に遭遇する。
桃子さんのようにこうして自分らしいやり方で、楽しく生きていくのもいいのかもしれません。

適度なファンタジーと適度なリアリティが心地よい、なんとも幸せな気持ちにさせられるお話でした。
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