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インフィニット 無限の記憶のgladdesignのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

肉体は死んでも魂は何度も生まれ変わる輪廻転生という設定が面白い。東洋的な思想とハリウッド手法をなんとかうまくミックスさせたかったのだろうという気概は感じた。(ただ多くのハリウッド作品と同様に、日本と中国の区別があまりできていない)

前世の記憶を持つ“インフィニット”は二つの勢力に分かれている。その特殊な能力を人類のために役立てようとする「ビリーバー」と、すべての生物を根絶やしにして、輪廻転生を終わらせようとする「ニヒリスト」たちの戦い。

冒頭から前世のシーンや回想シーンなどが多く、またそれぞれの説明は最小限になっていたので、やや話が分かりづらく感じた。
セリフ回しや出てくる単語など、欧米間の歴史や文化をある程度わかっていないと何のことについて言っているのかよくわからないと感じられる展開が続いた。この前半で脱落してしまう人が多いのではないかと危惧される。

やがて両者は「エッグ」と呼ばれる装置を奪い合うことになる。ニヒリストたちはエッグを使って人類を滅亡させようとしている。ただこのエッグの機能やどんな凄いものなのかという点がいまいちよくわからなかった。

さらに、ニヒリストたちは、特殊な弾丸を使って、ビリーバーたちの魂を閉じ込め永遠に転生できないようにしている。ニヒリストのボスであるバサーストは、もう輪廻には疲れたと言っているので、この特殊な弾丸で魂を封じ込めればよかったのではないかとちょっと思ってしまった。

後半は、それぞれの登場人物たちが何を目的に行動しているのか、何を求めているのかがわかりやすくなり、またアクションも畳み掛ける展開。飽きさせず、一気にラストまで楽しめた。

何らかの伏線があって、最後に回収してカタルシスを得る、というような展開は無い。この作品の本質的なテーマはそういった部分ではない。

前世の記憶を持ち続けることや、輪廻転生するという設定から、人は自分が自分であるということをどのように確認するのか、自分が自分であることをどうやって確信できるのか、という実は深いテーマがあるのではないかと思った。

結局のところ、自分1人が考えていただけでは、自分が何者であるかという事はあまり意味を持たない。他者と関わるなかで、自分がどんな役割を担えるのか、自分は何ができるのか、自分は何を考えているのか。他者との関係性の中でしか自分というものは確認できない。人間は、鏡のように反射するものがなければ、自分の顔を見ることすらできない。自分以外のものを通してでしか自分を見ることができないのだ。

冒頭のシーンで主人公が就職の面接に出向くシーンがある。そこで、過去の犯罪歴などを突かれ、そんなことで俺をわかった気になるなよと啖呵を切るシーン。この段階では、まだ主人公は自分がビリーバーであることをわかっていない。自分で自分のことがわかっていない(だから就職もうまくいかない)ということを象徴するシーンだ。

自分自身の違和感のある記憶の断片と仲間たちからの説明により、運命的なものを感じて、自分はビリーバーであると言うことを確信する。仲間がいなければ自分も存在し得ない。だから仲間のために戦う。この点はぶれていないことで、この映画は成立している。
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