メイプルわっふるG

事故物件 恐い間取りのメイプルわっふるGのレビュー・感想・評価

事故物件 恐い間取り(2020年製作の映画)
3.5
"事故物件住みます芸人"の体験談。
1〜3軒目は実話怪談。4軒目でエンターテイメント炸裂。

Jホラー感あふれる実話怪談、一転して突き抜けた除霊バトル、ともに面白かった。
普段の前情報なしとは違って予め知っていた内容もあり、全身で楽しむ気満々だったことも大きい。
後半は『さだかや』や白石ワールドくらいを覚悟していたから、むしろ現実的だった気さえする。いや、いろいろおかしいけども。

トーク番組『松原タニシのホラー学 中田秀夫監督SP』などで中田監督曰く、日本にハロウィンが浸透したことによって、ホラーは怖がるだけでなく、楽しむという欧米文化も広まったとのこと。時代とともにホラーの在り方も変化していくのだと。故に今作では"ホラーを楽しんでもらいたい"というコンセプトだった模様。

そんな小ネタを踏まえて準備万端で鑑賞に臨んだ今作。
4DXということもあり、その"お化け大会"はもう大笑い。一斉に触られたり叩かれたり熱い吐息かけられたり。
また、雨や血しぶきの度に水かけられてビシャビシャ。足元ではスネコスリが不意打ち仕掛けてくる。
余裕で174秒×∞笑って寿命延びたと思う。

原作の書籍『事故物件怪談 恐い間取り』は松原タニシさんサイン入り所持。
もともと『北野誠のおまえら行くな。』シリーズが好きなので、タニシさんのことは初登場の頃から見ていた。
だから劇中イベントの観客席にタニシさんがいたのにはちょっとした感動とニヤ笑い。というか、物販廊下の田中俊行さん(オカルトコレクター)の方がよほど長く映ってる尺の違いにも笑った。

瀬戸くん相変わらず顔ちっさ睫毛なっが。終盤で酸欠か過呼吸かになりそうなくらい大活躍。この御方は年を取らないのか。『貞子3D』から変わってないように見えるのだけど。

奈緒さんの"視える"表情が良かった。一度きりの断末魔なものではなく、見たくないのに目を離すのも怖い、視えちゃってる感が伝わってくる。ひたすら健気な役どころ。

他にも個性あふれる面々。
プロデューサー木下ほうかさんの柔らかく人当たりの良い無茶ぶり無理無体。
事故物件エキスパート江口のりこさんの冷静沈着なベテランぶりと点心。
キャッチ霊媒師の高田純次さんや食堂おやっさんの宇野祥平さん。

亀梨和也さん抜擢には当時驚いたもの。タニシさんリスペクトな仕草などの意気込みも知って、どれほどの再現度なのかと期待と不安がけっこうあった。
結果としては、タニシさんではなく山野ヤマメの物語。亀梨さん映画としてこれはこれでアリなのだと思う。

芸人のキャスティングをジャニーズにした時点で既に印象は変わっていたけれど、山野ヤマメのタニシさん要素は装いくらいで、内面は完全にヤマメというキャラクター。
エンタメ作品として出来上がった人物、映画としての性格だから正解なのだろう。

タニシさんのホラー番組やニコ生は一通り見ているので、わずかとはいえ人となりは知っているつもり。
いつもひょうひょうとしていて他者を立てるトークは聞き心地が良い。
なので、他者を都合の良い女扱いしたり、別離にしてもあんな言い方するのはまったく想像つかない。

そういったシーンがある度、タニシさんではなく人気アイドル(亀梨さんのことではなく勝ち組テンプレ)をベースにキャラクター生成や脚本作りしたんだなぁと。話が進むにつれタニシさん像から離れ、山野ヤマメという人物としてしか見れなくなったのは、むしろ映画作品として良いことだとは思っている。

ここらへんは"都市ボーイズ"の見解とはちょっと違うところ。もっとも私は芸人ではないので、芸人あるあるのネタはよくわからないということもあるのだけど。

気になった点と言えば、実際にあったにも関わらず映画化されなかった部屋中のオーブや立入禁止区域の表示、ロフト部屋の生首など。エンタメ性としてけっこうなネタだと思うけども、創作物としては逆に嘘っぽくなるのかな。
起承転結のある小説と違い、現実の方が不条理で不可解って、小説より奇なりそのまんま。

それと4DXで贅沢(希望)を言うなら、血しぶきはもうちょい生ぬるい温水の方がリアリティ出たかも。雨水の冷水と差があるだけで相当違うと思う。
回想シーンで死人扱いだから体温ナシと言われたらそれまでだけど。ちなみに『バタリアン』では体温ゼロではなく気温と同じ設定だった気がする。