三樹夫

劇場版 幽☆遊☆白書の三樹夫のレビュー・感想・評価

劇場版 幽☆遊☆白書(1993年製作の映画)
2.8
『幽☆遊☆白書』初の劇場版だが東映アニメフェア内の作品で、『ドラゴンボール』と『Dr.スランプ アラレちゃん』と抱き合わせになっており、本編は25分とTVアニメ1話分しかなく、ストーリーもコエンマが誘拐されたので幽助たち4人で取り返しに行くという、子供向けというかストーリーはあってないようなもの。
アニメ『幽☆遊☆白書』は最初は小学生をターゲットに作られたのが、途中から対象年齢が中学生以上の少年少女に引き上げられている。その違いが分かりやすいのがOPで、3バージョンあるが、最初のOPはカラフルな色使いやキャラの頭身、幽助と桑原の制服の色など完全に子供向けのデザインになっている。これが仙水編以降のOPになると夜の黒を基調とした色使いで始まり、キャラの頭身が伸び、幽助はジーパンTシャツにジャケットで桑原はジーパンTシャツ、夜の都市のビル群と都市的なイメージを挿入し、コエンマは大人バージョンで出てくると明らかに対象年齢が引き上げられている。原作が仙水編以降かなりダークになるのもあるが、放送したら中学生以上のファンが多いことに制作者が気付いたというのもあると思う。
この映画は小学生向き期のOPであるのが分かりやすいが、小学生ぐらいを対象に作られている。小学生でも低学年がターゲットみたいな感じ。一応桑原、飛影、蔵馬も出てくるが雑魚相手にしているだけで、実質幽助だけしかバトルの見せ場がない。映画単体としてはかなり退屈な出来になっている。

制作スタジオはぴえろで、他のジャンプ作品だと『忍空』や『ナルト』のバトルアニメを作っているが、『北斗の拳』から『ナルト』までのジャンプバトルアニメを東映とぴえろで比べると、東映のアクションはカンフーの殺陣っぽくってぴえろのアクションはストリートファイトっぽい。
ジャンプアニメの伝統にのっとりこのアニメも声優が叫ぶが、どう考えても佐々木望が喉を痛めたのはこのアニメが原因としか思えない。アニメ初期と最終回で声が違ってるし。このアニメで特に叫ぶツートップが佐々木望と檜山修之で、この映画では叫ばないが、飛影は普段ボソボソ喋る感じなのに技名叫ぶ時だけ突然勇者王になる。

冨樫義博の漫画メソッドは『幽☆遊☆白書』で大分固まっており、メイン4人のキャラ設定および能力設定は『HUNTER×HUNTER』にも引き継がれる。脳筋バカの主人公は強化系よりで放出系能力も持つ、背の高いコメディリリーフは具現化系、中性的なイケメンは操作系、狐系のクールでダークな奴は変化系とほぼ一緒。他のキャラの流用でいえば柳沢→パクノダで、顔のデザインも能力もほぼ一緒になっている。
冨樫義博の特色といえばサンプリングで、自分の好きなものを元ネタにしてバンバン入れてくる。念能力の設定が能力者の趣味嗜好などが反映されるとなっているが、それって冨樫義博のサンプリング創作手法のことやん。『幽☆遊☆白書』だと仙水編が一番分かりやすいが、領域はスタンドだし、仙水の闇墜ちは『デビルマン』だし、禁句戦は筒井の『残像に口紅を』だし、魔人幽助は『うしおととら』だし。死々若丸の爆吐髑触葬は『ゴッドサイダー』が元ネタだと思う。後、『幽☆遊☆白書』はもう関係ないけど、個人的ににらんでいるのは『HUNTER×HUNTER』のキメラアント編のナレーションの入れ方は『SLAM DUNK』で、ノヴは花形透が元ネタだと思っている。
そして冨樫義博と言えば休載で、仮病だろとブチ切れる奴までいるが、腰痛は本当だと思う。『幽☆遊☆白書』単行本の時点で腰痛のため寝そべって漫画描いた話出てくるし。腰痛云々は『HUNTER×HUNTER』から始まった話ではない。また模写でもなんでもいいから漫画描いてみれば分かるが、こんなもん毎週毎週19ページも描くの無理と分かる。そもそも週刊連載が元々無理なシステムであり、目腕腰が平気でぶっ壊れてくる。私は中学生の時漫画家志望だったが世代でもない『北斗の拳』の模写を1コマ分しただけで、こんなもん毎週19ページも描けんと早々と筆を折った(あとペン入れも出来なかった)。画が下手と言われる車田正美ですら『聖闘士星矢』の模写してみたら難しかったし、週刊連載は絶対目腕腰どれか壊すし寿命も縮まると思った。手塚先生の『手塚治虫のマンガの描き方』には、漫画を描いて描いて描きまくって、それでもまだ漫画を描きたいと思う人間が漫画家に向いていると書いてあったがその通りだと思う。
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