けんたろう

勝手に逃げろ/人生のけんたろうのネタバレレビュー・内容・結末

勝手に逃げろ/人生(1980年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

間抜けでエロいおはなし。


映画の発明時に生まれた機構と其の発展の歴史が築いてきた常識とを解体し、新たなる映画の道を切り拓いてきたゴダアルが、自身第二の処女作に位置付けたといふ本作。矢張り表現の面白さが随所に見らる。滑らかなる映像の断絶。映像と音声の分裂。スロオ・モオシヨンとストツプ・モオシヨンの多用。表現が面白い。

其れから又た、ユウモアにも富んでゐる。中でも、肛門への執着を始めとする機械的な性描写と、其の死に様は印象深い。己れの慾望も其の果てもを滑稽に、或いはシニカルに描く其の姿勢には、可笑しみと共に一種の悲哀を覚ゆ。
ところで、女のケツを追うかけて無様に──といふのは、何んだか『勝手にしやがれ』のやうである。何んなら、『勝手にしやがれ』よりも強調せられてゐるやうな気さへする。女が余まりに冷酷で且つ男が余まりに滑稽な此の結末は、果たしてゴダアルの現実或いは理想なんかしら。然れば私しは深く彼れに賛同いたす。そして又た、慾望も理想もユウモラスに描写せんとする彼れを深く好く。

ゴダアルが商業映画復帰を果たしたといふ、記念すべき一作。観られて大へん好かつた。因みに物語りはさつぱり判らない。