じゅ

ポゼッサーのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

ポゼッサー(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

あー、好きだな。
なんか、好きっていうすごく純度の高い気持ちが湧いた。


とあるホテルのラウンジ。接客係のホリーがマッツァ弁護士に突然襲い掛かり、滅多刺しにして殺した。ホリーは拳銃自殺を図るも実行できず、駆けつけた警備員に射殺された。
別の場所で一人の女性が目を覚ました。タシャ・ヴォスは繋がれていた機械を外され、管理者のガーダーによる検査を受ける。祖父の形見のパイプ、幼少期に作り罪悪感を覚えた蝶の標本、自分の所持品でない何かを全て判別し、記憶の混濁がないことを確かめられた。彼女らがいるのはトレマトン社。他者の体を乗っ取って標的を殺し、その後乗っ取った宿主に自殺させる方式で委託殺人を請け負っていた。タシャはトレマトンの腕利きの工作員で、繋がれていた機械は工作員が宿主の意識を乗っ取るための装置だった。
タシャは別れた元夫のマイケルとアイラに会った後、次の任務に就いた。標的はデータマイニングの大手ズースルー社のCEOジョン・パースと娘のエヴァ。依頼者はジョンの義理の息子であるリンド。会社を奪い取る目的だった。実行は、エヴァの恋人のコリン・テイトの体を使って行うことになった。予定通りコリンの意識を乗っ取ったエヴァ。原因不明の不調などのトラブルに見舞われながらも、パーティの場でジョンに意識不明の重傷を負わせ、エヴァの頭を撃ち抜いた。しかし、ホリーの件と同様にコリンを自殺させることができず、逆にコリンに意識の支配を奪い返される状況となった。
浮気相手の家に逃げ込んだコリン。タシャとの意識の主導権の奪い合いが起こる中、彼女の家にコリンの同僚のエディが訪ねてきた。実はエディもトレマトンの工作員が乗っ取った駒で、タシャに主導権を握らせて任務を終わらせる補助をしに来ていた。エディがコリンの頭に埋めたチップを調整すると、タシャの意識の中にコリンが現れる。意識の中でコリンはタシャの顔を握り潰し、その皮膚を自らの頭にマスクのように被せた。コリンの中にタシャの記憶がフラッシュバックする。
飛び起きたコリンは自分自身に銃口を向けていた。エディが頭から血を流して死んでいて、シャワールームに倒れている浮気相手は眉間に穴が空いていた。
コリンはタシャの記憶を基にマイケルの家に向かった。そこに自分の意識を乗っ取って周囲の人間たちを殺させた元凶の女がいると思った。女の元夫に銃を向けると、女は意識の中に現れた。女は彼のことを愛していたが定かなのかわからないと述べた。隙をついて抵抗してきたマイケルを、肉切り包丁の刃を何度も叩き付けて殺した。
意識は再びタシャへ。頭に銃を突きつける。やはり引金を引けない。突然首を刺される。息子のアイラだった。タシャの意識はアイラに向けて何度も引金を引き、息子はその場に倒れ込んだ。コリンとアイラの体から流れ出る血が混ざり合う。息子が発した「脱出」の声には、別の者の声が混ざっていた。
かくしてタシャはようやく目を覚ました。ガーダーによる検査を受ける。祖父のパイプと蝶の標本を判別することはできた。


タシャの顔の皮を被ったコリンの画力が強すぎるんよな。これが見たくて観たわ。思ったより長い尺があてられててよかったw
あれつまり、それまではコリンの中にタシャが入ってて要はタシャがコリンの顔の皮を被るような状況だったけど逆転したって思えばいいのかな。するとどうなるかっていうと、たぶん記憶を覗き見られるというか、流れ込んでくるみたいなことが起こるのかなと解釈してる。たぶんタシャがコリンに成り代わって普通に生活できてたのって、タシャの中にコリンの記憶が流れ込んできたからなのかなと想像する。朝起きてまず何をするとかの細かい生活習慣とか具体的にどんな仕事の内容かって、窓から望遠鏡で覗いてるだけじゃコピーできないはずで、その辺はコリンの記憶を借りてカバーしてたんじゃないかと思ってる。それと逆のことが起こって、コリンの中にタシャの記憶が流れ込んできて、別れた夫とその息子がどこにいるとか、ちょっと前にその家に行って何をしたみたいなことをコリンが知ることになったと思う。

まあでもそうだとして、流れ込んできたのは一部の記憶に止まったんだな。コリンは体と意識をある女に乗っ取られていたことには気づいたけど、彼女がトレマトンなる企業のどっかの部屋で寝てることまではわからなかったし。
もしかしたらトレマトン社は、タシャとかの工作員が記憶を逆にハックされる可能性を想定して自社に関する記憶にロックをかけるみたいなことをしていたのかもしれない。うっすらそう思うけど根拠はない。


そのトレマトン社の工作員だけど、なんか主観が消えていってるような印象。どう表現するのが適切かわからんけど。

ガーダーの姐御なんかもたぶん現役の頃があってタシャみたくエース的存在だったんだろうなと想像してるけど、そのガーダーは「自分が何者か定かでない」みたいなことを言ってた。見りゃわかるように記憶喪失みたいなことでは当然ないはすで、それはつまり自分が持っている意思とか感情みたいなのが本当に自分のものなのかわからないようになってしまったということなのかなと思う。
というか、意思とか感情みたいなのとやらすら消えてきているのかも。

おそらくタシャも同じような状況で、コリンの頭の中でマイケルについて「愛していたか定かではない」みたいなことを言っていた。それって以前からだったんだろうかっていう話。
べつに殺しちゃっていいよって言うんなら、それってもう愛していないかそれよりひどい気持ちで確定してる時だと思うけど、そうじゃなくて「定かでない」っていう状況設定なのよな。それほどまでに頭わけわかんなくなってるってことが強調されてるように見えた。というかそう思っとくのが俺にはおもろい。
あと、息子のアイラをめった撃ちにしてんのよな。体と意識を乗っ取られたアイラに首を刺されてのこと。コリンの意識で撃つかと思いきや、タシャの意識で撃ってた。そのだいぶ前にはタシャがマイケルの家に行ったときに寝てるアイラの額に口づけしてるような描写があったのに。

最初にタシャがガーダーの検査を受けてるときに子供の頃に作った蝶の標本について今も罪悪感があるって言ってたけど、最後同じ検査を受けたときは罪悪感どうのこうのとは言ってなかったのも関係してると思う。カットされたとかメタ的なことじゃなくて、タシャの中からその気持ちが消失したってことだと思ってる。(そう思っておいた方がおもろいから。)

記憶は全然問題ないけど、主観というか感情というか、そんなのが消えていってる気がする。
トレマトン社さん、なんというか、検査項目見直しといた方いいっすよ。
じゅ

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