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MOTHER マザーのETTYのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.5
まずこれが実話だというから驚きだ。「誰もボクを見ていない」というタイトルで本が出版されていた。実際の主人公も手記やインタビューなどで事件について語っている。
親という絶対的存在、親と子供の間にある関係性や形の異なる愛情について知り、考えるきっかけになった。
映画の中の母親と息子は逃げられない関係性であり、お互いに依存していると感じた。
たびたび、「私の子供」「自分の子」というフレーズが多く出てくる。一見子供に対する愛情に見えるが、この話の中では単なる愛情と捉えることは難しい。
子供の頃から親を含め、さまざまな大人に怒鳴られて叩かれて辛い思いをたくさんしてきた息子の周平。
反抗することも口答えすることもできず、自分の考えを持つことが許されない環境にある苦悩に同情した。周平の思考には必ず母親の思考が絡んでいて、ある意味操られていたのだと思う。親の顔色を伺って生きていかなければならない周平を思うと辛かった
しかし、それに対して親を責めるのではなく、自分が我慢して受け入れている姿が健気だった。
悪いことだとわかっていて、よくしてくれた人を裏切ることになってしまったとしても、やはり母親といることを好んだ周平と母親の少し複雑な絆を感じた。

母親であるけれど自分を抑圧する存在…
どうしても逆らえない不可抗力…
でも一緒にいたい…

人間の心は理屈ではない、家族ほど難しいものはないと強く感じる一作だった。
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