幸せな人、恵まれて生きてきた人はきっと秋子を責めるだろうし、悪人だと裁くだろう。
だけど人は、生まれた瞬間、誰も悪い人なんていない。みんなただの赤ちゃんだ。
秋子はどうしてこうならなきゃいけなくなってしまったのだろう。
秋子だけじゃない。遼だって。
生きてきた中で、何を見て、感じ、何を失い、何に絶望し、どれだけ深く暗い海の中で溺れてきただろう。
どうして自分への愛を持てなくなってしまったのだろう。どうして自分の価値を誰かに依存しなくてはならなくなってしまったのだろう。
きっと私たちには到底計り知れない程の苦しみの中にいる。
どうして人は簡単に人を裁くのだろう。
その人の心なんて何も知らないくせに
どうして自分を疑わないのだろう。
人を裁く前に、自分が健全に正常に生きてこられたこと、愛されたこと、恵まれてきたことに気づき、感謝できる人がどれだけいるのだろう
