どこにぶつければいいのか分からない感情と感覚がとめどなく溢れてくる作品だった。
こういうとき比較されがちな作品『誰も知らない』に近いけど、個人的にはこっちのほうが余程作品を受け止めるのはしんどかった。
その理由としては「母親が子から離れられないだけではなく、子もまた母親を変わることなく好きだから」。
どちらかが、関心を捨て一方的に離れていくのであれば、おかしな言い方かもしれないが救われる部分があっただろうなというくらい。
離れれば違う生き方ができるという確信と、離れてしまったら生きる当てがないという本能。
親子の歯車を狂わせたのはその両方ではないだろうか。
親と子という狭い世界からほんの少し世界を知ることになってからの、自我と服従の狭間で揺れる周平の姿は、結末を知ってから振り返ると色々な意味を含んだ「あのときもしも…」という気持ちが拭えない。
終盤の、周平が本音が垣間見える瞬間が何よりやるせない気持ちにされた。そして、彼なりに懸命にもがいて生きてきたんだと突きつけられた気がした。
長澤まさみ、阿部サダヲの表現力はさることながら、奥平大兼の佇まいや瞳の奥の揺らぎが印象的だ。
