てっぺい

MOTHER マザーのてっぺいのレビュー・感想・評価

MOTHER マザー(2020年製作の映画)
3.5
【毒母映画】
男にだらしなく、育児放棄する胸糞毒母。それでもその母に応えようとする息子が迎える衝撃的な結末とその訳。事実に基づく骨太映画で、長澤まさみの怪演にも注目。
◆概要
実際に起きた事件に着想を得た物語。
監督:「日日是好日」大森立嗣
出演:長澤まさみ、阿部サダヲ
製作総指揮:「新聞記者」河村光庸
◆ストーリー
シングルマザーの秋子は、息子の周平に異様に執着し、自分に忠実であることを強いてきた。身内からも絶縁され、社会から孤立した母子の間には絆が生まれ、その絆が、17歳に成長した周平をひとつの殺人事件へと向かわせる。
◆感想
“毒母”の話。生活が堕落し社会からも孤立、育児放棄のクソダメ毒母。それでもそんな母にひたむきに応えようとする息子。2人が至る結末、そしてその訳は衝撃そのもの。事実に基づく話なだけに考えさせられる。
◆毒母
男にだらしなく手癖も悪い、育児放棄どころか子供に無心させる胸糞毒母。感情の起伏も激しく一つもいいところがない。逆にここまで胸糞な母親像を描けた事、そして長澤まさみの怪演に拍手を送りたいほど。それだけ心を揺さぶってくるという意味では、徹底していたと思う。

◆以下ネタバレ

◆長澤まさみ
まさに怪演そのもの。遼(阿部サダヲ)に去られ、周平にビンタで大泣きする感情爆発のシーンは圧巻だった。映画を通して肌艶も次第に落ち、白髪も増える役作り。ラストシーンの物憂げな表情も良かった。
◆映画表現
周平がまだ幼少のころ、神社から再び無心に向かおうとした周平を止め抱きしめる秋子。同じ神社の同じ狛犬の下で、殺人を犯した周平を秋子は迎える。まだ“母親”としての心を持ち合わせていた昔と、堕ちるところまで堕ちてしまった秋子の対比表現であると同時に、昔抱きしめ合う事が出来ていた2人の絆は、お互い触れることもない距離にあり、“母子ではない別の何か”の表現にもなっていたと思う。“共依存”と言われ、秋子自身も“自分の分身”と語った2人の関係は、すでに常人には分かり得ない、2人で1人の絶対的な関係性だったと想像を先ばせるのも面白い。

監督が演者の“間”を大事にする人(だと思っている)なので、遼が復縁を求めて保護施設にきた時の阿部サダヲのダンス(?)はアドリブだと思う。あのシーンでダンスを差し込むセンスに脱帽。2人が出会ったゲーセンで遼がやっていたダンスゲームを想起したのだろうか笑。やっぱり彼は何をやらせても上手い。長澤まさみも含め、改めて役者のうまさを感じた映画にもなりました。
◆トリビア
本作の配給は、「あゝ、荒野」「新聞記者」「宮本から君へ」など、“忖度せず突き抜けた作品”を近年送り出してきたスターサンズによるもの。(https://eiga.com/movie/92550/special/)

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