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僕が跳びはねる理由のワンコのレビュー・感想・評価

僕が跳びはねる理由(2020年製作の映画)
4.0
【知ることの大切さ】

この東田直樹原作の「自閉症の僕が跳びはねる理由」を翻訳したのは、映画化もされたSF大作の「クラウド・アトラス」を書いたデイビッド・ミッチェルだ。

自身も自閉症の息子を持ち、さまざまなことで悩んでいる時に、この原作に出会い、自閉症について多くの事を知り、感銘を受けて翻訳を手がけ、その後、NHKスペシャルが、この原作が世界中で読まれるようになった事を紹介し、デイビッド・ミッチェルの東田直樹との邂逅までをドキュメンタリーで伝えていた。

デイビッド・ミッチェルは、日本で8年ほど過ごした経験があり、日本語が堪能だ。

作品の中で紹介させる自閉症スペクトラムの子供が描いた、観察力とデフォルメの鋭い人物の絵や、屈託のない笑顔、アルファベットボードで綴られる、簡潔で説得力のある文章。
どれも感激する。

また、先進国は、まだ良い方で、発展途上国は、自閉症についてほとんど理解されていないどころか、悪魔の仕業のような言われ方をすることもあり、今後の国連の活動は、民主化と同時に、そうした理解も得られるように進んでいけば良いなと思ったりもする。

体躯的な障がいの場合、パラリンピックなど意義深いものがある一方、自閉症の場合はどうなのだろうと、自分の知識のカバレッジの少なさを改めて認識したりもする。

これは、ドキュメンタリーだけれども、もし、物語としてご覧になられたいという方は、「旅立つ息子へ」も上映中なので、足を運んでみたらいかがでしょうか。

※ 実は、この上映初日に映画館に足を運んだのだが、その時に配られた鑑賞者向けのフライヤーに自閉症を解説した文章があって、もし、これを読んで興味を持たれた方は、ご覧になったらどうかと思ったので、以下に紹介させてください。

「自閉症とは…?
自閉症とは発達障害のひとつ。原因は特定されておらず、生まれつきの中枢神経機能の障害であると考えられている。
「対人関係の構築が難しく集団に馴染めない」「強いこだわりがあり変化を嫌う」という二大特徴があるが、これが本人の生活に支障を及ぼしていなければ障害とは呼ばない。
反対に、それによって本人が苦しみ生活にもさまざまな不自由がある場合には、医療や福祉のサポートが必要になる。
精神科の分野における自閉症の歴史はまだ80年に満たないため、その概念は近年でも大きく変化している。
広汎性発達障害、高機能自閉症、アスペルガー症候群などの用語も生まれては消え、現在では「自閉症スペクトラム」(スペクトラム=集合体)という名称を使うのが一般的。
「自閉症スペクトラム」は、障害者と見なす必要のない人まで含むと、全人口の10%を占めるとも言われる。
もしも、それだけの人数がいるとなれば、これを「障害」と考えるのは無理があるだろう。
現在では、「症状」を「個性」と受け止め、発達障害を持つ人社会のマイノリティとして支援する流れも生まれている。」

※※ まず、環境活動家でトランプに批判の矛先を向けていたグレタ・トゥンベリさんを、日本でもアスペルガー症候群で、短縮系のアスペとか呼んで卑下していたクソバカがいたが、この呼称でさえ時代遅れになっていたに驚いたし、ここに記載されてあるように発達障害の人が約10%ほどいると考えられているとしたら、それを行動抑制や人間性の問題だとか安易に片付けないで、受け入れるということを社会として考えるべきではないだろうか。

アスペと呼んでいた人間が、実は自閉症スペクトラムである可能性だってあるのだと考えたら、クソバカという表現もよろしくはないですね。
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