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フォーリング 50年間の想い出のsymaxのレビュー・感想・評価

3.5
"グウェン…グウェン!…"
狭い飛行機の通路で妻の名を叫ぶウィリスを優しく諭す息子ジョン…

認知症の兆候を見せ、農場での一人暮らしに限界が見え始めた事を心配した息子ジョンは、父の終の住処を一緒に探すためロサンゼルスに父を呼び寄せたのですが…元来の頑固で保守的な性格の上、認知症によりウィリスの口から出る言葉は罵詈雑言…そんな父の姿を見る内に、ジョンの心に幼き頃の過去が蘇る…


ヴィゴ・モーテンセンの実体験ではないかと思われる程、切ない想い溢れる初監督作…

父ウィリスは、頑固で保守的というよりも、モラハラが酷いクズ夫であり、父親…それでもウィリスなりの愛情を微かにではありますが、ジョンも妹のサラも感じているからこそ赦そうと考えたのかもしれません。

ウィリスも自らの終焉を目前として、過去の棚卸しをするかのように、至る所で過去を想い出しますが、それは自分の都合の良い過去に書き換えてしまっているようで、子の想いは伝わっていないのではないかと切なくなります。

ウィリスを演じたランス・ヘリクセンの現実と過去の境界線が曖昧となり、本人も戸惑いながらも暴言を吐かざるを得ないやるせなさを圧巻の演技力で魅せ、終始圧倒される素晴らしい演技でした。

若きウィリスを演じたスヴェリル・グドナソンがどことなくヴィゴに似ているので、現在のジョンとリンクというか比較が鮮やかでした。

ジョンに同性のパートナーがいて、養女を育て幸せな家庭を持っている環境を敢えて持ってきているところも興味深いです。

やたらと私自身の事が思い出されて、二重に切なくなっている自分が居て、いたたまれなくなってしまって…
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