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ナイトメア・アリーのumisodachiのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.5
ギレルモ・デル・トロ監督最新作。1946年の小説が原作で2度目の映画化。原作も前作も未見。

死体に火をつけ家を出たスタンは、サーカス一座と巡り合う。そこで読心術(メンタリズム)を習得した彼は、親密になったモリーとサーカスを脱出。メンタリズムを使った透視ショーで稼ぐようになるが……。

あらすじを端折りまくったが、キャラクターも諸要素も極めて多いゴチャゴチャしたノワールもの。有象無象が入り混じるサーカスの禍々しさ、最初から最後までスタンを取り巻く犯罪の気配、醜悪な人間の本性に迫るスリリングな展開。ギレルモ・デル・トロならではの世界観のつくり込み方で、まるでタイムスリップしたかのような没入感を味わえる作品だった。

ただ、全体を通して退屈で退屈で。なんでなのかなあ?ストーリーはしっかりあるものの前半の流れが悪いからなのか、世界観が濃すぎて一本調子に感じてしまうからなのか。ケイト・ブランシェット登場以降(特にラスト30分)は異様に面白くなったのだが、それまでですっかり気力が削がれてしまった。期待値が高すぎたか。

あとは、主演のブラッドリー・クーパーのキャラクターもあるのかなと。こういった作品で主演しがちなヒュー・ジャックマンやユアン・マクレガーやジョニー・デップらと比べて、あまりにも普通っぽいんだよね。ブラッドリー・クーパーの魅力って、「普通のハンサムなアメリカ人」を演じているときか、カリスマ的な誰かのそばにいる役を演じているときだと私は感じていて(レディ・ガガ、ジェニファー・ローレンス、クリント・イーストウッドなど)。今回のスタンのようなキャラクターだと、いまひとつ人間性が感じられない。かといって冷たく見えるわけでもなく、他のキャラクターに比べて薄いというか。普通の人が小狡く立ち回っているように見えてしまい(それが狙いなのかもしれないけれど)、全然引き付けられなかった。汚らしい恰好をすればするほど個性がなくなってしまう二枚目然としたルックスのせいもあるのかも。

対して、ケイト・ブランシェットは素晴らしい。いつも素晴らしいが、今回はとびぬけている。登場から退場まで一瞬も外さずにキメてくる。めちゃくちゃかっこいいし、こんなやつに敵うわけないと思わせる。ルーニー・マーラもちょっと凡庸な印象いなってしまっていたので(これは役柄のせいもある)、途中からは完全にケイト無双であった……どこまでもついていきます!

トニ・コレットやウィレム・デフォーなどサーカスの面々は生き生きしていて魅力的だったが、いかんせん前半がタルかったので残念。ラストシーンもなんだかなあ。ブラッドリー・クーパーじゃなければ決まったのかもしれないけど。イマイチ!

でもたぶん、一般的にはかなり面白いと感じる作品なのかもしれません。
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