雨丘もびり

ナイトメア・アリーの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
1.9
ケイト・ブランシェットがあの仕上がりで居たら、象牙の小銃くらい持ってるわよ。
透視能力いらんですばい。

美術は息をのむ美しさ。オチは好き。
欲を欠いたあまり道を踏み外す人物たちを、"怪物"として妖しく艶やかに演じきった役者さん達が素晴らしい。
ブランデーグラスのわななく音が美しく響いてため息。

良かったところはたくさんあるし、褒めコメする皆さんにも同意。
面白くなりそうなニオイはムンムンする。ニオイは。



ただ、ストーリーがつまらないので、私にはツラかった。

前半のサーカス団では物語がぜんッぜん動かなくて、正直なにを見せられてるのか掴めずに疲れた。
後半の"詐欺師のし上がりモノ"も、主人公の読心術がすぐバレそう/飽きられそうなお粗末さでハラハラしない。
あの手この手で策を弄し、ぐいぐい資産家に取り入って行った結果、のっぴきならない状況に追い込まれてしまい...とは展開しなかった。
結末が予想できるというより、こちらの期待を超えてこない。

クライマックスの交霊術詐欺も...いや、そんなザツな仕掛けじゃ絶対バレるじゃんって思って見てたら、案の定でがっかり。
バレたところで...それで終わり?っていう着地。
せめてあの暴君大富豪が、幽霊役のモリーを亡き想い人と信じ込んだ結果、撃ち殺してしまう....とかすれば?って思った。
その方が悲劇性も高まるし、舌三寸身を滅ぼす的なテーマに沿う。
あのジイさん、大枚はたいて故人を呼び出して、何がしたかったの?

主人公スタンのアップダウンが浅く、悲劇性が軽い。
だから、彼の上昇も破滅もぜんぜん響かなかった。

ディテールは惹かれるのに物語がぺったんこなのは『クリムゾン・ピーク』に似てる。
嘘つきが身を亡ぼす系の映画=ファンタジー作家の自虐映画にも振り切れてないし、うーん....退屈だった。

.....これだったらまだ、私の好みじゃないけど『シャッターアイランド』『プレステージ』の方が楽しかったな。あと『ブラザーズ・グリム』。


でも、なんとなく、デルトロ監督はこういう仕上がりを狙って作った気もする。
だからこれで良いのかも。
私、次作も観に行くとは思うしね。
今回みたいに初日鑑賞は避けるかもしんないけどw。