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ナイトメア・アリーのYYamadaのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
【スリラー映画のススメ】
◆作品名:
ナイトメア・アリー (2021)
◆映倫区分 / 日本 : G(制限なし)
◆スリラーの要素
 人間の野心と猜疑心が破滅に向かう
◆本作のポジショニング
 サスペンス □■□□□ ホラー

〈本作の粗筋〉 シネマトゥデイより抜粋
・1939年、カーニバルのショーを観終わったスタントンは、マネージャーのクレムに声をかけられる。そこで出会った読心術師のジーナに気に入られたスタントンは、彼女の仕事を手伝い、そのテクニックを身につけていく。
・人気者となった彼は一座を離れて活動を始めるが、ある日精神科医を名乗る女性と出会う…。

〈見処〉
①ショービズ界の華やかな光と
 甘美な闇が誘う、華麗なる迷宮——
・『ナイトメア・アリー』(意訳:悪夢小路)は、2021年に製作されたスリラー映画。1946年に刊行された小説『ナイトメア・アリー 悪夢小路』を原作とし、1947年の『悪魔の往く町』に続く2度目の映画化。監督・脚本はギレルモ・デル・トロ。
・本作は、2021年12月に全米公開されたが、作品のターゲット層がCOVID-19パンデミックの影響で劇場から遠退いた高齢層であったこと、大ヒット作品『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』と重なったことにより、製作費6000万ドルに対して、全米興行収入は970万ドルと低調だった。
・しかしながら、批評面では評価が高く、2022年の第94回アカデミー賞では作品賞に加え撮影、美術、衣装デザインの計4部門にノミネート。デル・トロ監督においては、アカデミー賞作品賞・監督賞・作曲賞・美術賞に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』に続く栄誉となる。

②主役級キャストの終結
・本作の主人公スタンを演じるのは、当初
デル・トロが考えていたレオナルド・ディカプリオのキャスティング不芳により、『アメリカン・スナイパー』のブラッドリー・クーパーが本作の主演と製作と兼務し、軽薄で危うさが漂う人間臭いキャラクターを、見事に演じている。
・彼を取り巻くのは『キャロル』以来の競演となるケイト・ブランシェットとルーニー・マーラ。スタンと共謀する博士と、彼に恋したばかりに騒動に巻き込まれていくカーニバルの一員を演じる。
・さらに『ヘレディタリー 継承』のトニ・コレットが読心術師役を、『スパイダーマン/ノー・ウェイ・ホーム』のウィレム・デフォーがカーニバルの団長を演じるなど、主役級の面々がキャスティングされている。
・そのほか『シェイプ・オブ・ウォーター』のリチャード・ジェンキンス、『ヘルボーイ』ロン・パールマンら、デル・トロ組のメンバーも集結。デル・トロの不気味さと美しさが同居する世界観を支えている。

③結び…本作の見処は?
◎: 1940年代の怪しげな雰囲気漂う移動式遊園地や社交界の描写まで、ダークな世界観が素晴らしい。ギレルモ・デル・トロ監督にとって『バンズ・ラビリンス』『シェイプ・オブ・ウォーター』と異なり、初めて手掛ける超自然的フィクション要素がない作品となるが、本作の幻想的な世界観は彼ならでは。
◎: 作品の中盤にケイト・ブランシェットが登場以降、栄光と破滅、駆け引きと裏切りなど、ネオ・ノワールサイコスリラー」と称される展開が加速。
▲: 上映時間150分は少々長い。カーニバル離脱前後の作品構成の繋がりや、終盤の惨劇の要因となった事件の全容など、古典的な原作から脱却し、今どきのリアリティ重視の展開としても良かったかもしれない。
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