おなべ

ナイトメア・アリーのおなべのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
「こいつは人間か 獣か?」

「一流の科学者に人間と断定された
この生き物は一体どこから来たのか」

「我々と同じ この世に生を受けて
どこで道を間違えたのか」

◉《ギレルモ・デル・トロ》監督特有のダークでファンタジックな世界観が渦巻いたサスペンス・スリラー作品。第94回アカデミー賞にて[作品賞]を含む、主要4部門にノミネート。個人的には[美術賞]が有力かと。

◉1940年代。身元不詳の男が辿り着いた先は、とある移動遊園地。カーニバルの一座を取り纏め、フリークスショーで興行師をしているクレムに仕事をもらい、檻から脱走した“獣”と呼ばれる生き物を探す事に…。

◉先ず、予告編の煽りが丁度良い。程よく不気味さや奇妙な世界観を呈しつつ「獣は誰のこと?」「その正体は何ぞ?」と、ネタバレしない程度に軽く好奇心を煽る感じに好感を持てた。

◉移動遊園地のフリークショーを題材にした本作。従来の監督作品のように空想上の生き物が出てこないリアルな設定は珍しい。ただ、何が凄いって、それらのクリーチャーが登場しないにも拘らず、雰囲気は申し分ないくらい監督のそれ。

◉さらに、呪い(まじない)染みた“禁忌の力”が、まるで存在するかのような作りになっており、秀逸な演出力と監督色が溢れ出ていた。

◉《ブラッドリー・クーパー》《ウィレム・デフォー》《ケイト・ブランシェット》《ルーニー・マーラ》etc…豪華&実力派の役者陣の好演が光る。それぞれクセのある登場人物でありながら、完全に役に憑依しており(色んな意味で)、その真に迫った怪演に思わず引き込まれた。

◉個人的にお気に入りの《ロン・パールマン》も出演。チャンスがあれば彼のナックルパンチが火を噴く瞬間を見れるかもしれない。

◉150分と長めな作品だけど、美術や過激な映像に引き込まれ、意外とあっという間だった印象。小難しい非科学的な要素も含まれるため、それに興味が無い人や苦手な人は退屈に感じるかもしれない。しかし、前半パートのフリが見事に最後で落ちるから、頑張って最後まで観てほしい(もしかしたら途中で予想できるかも)。










【以下ネタバレ含む】











◉宿命──。

◉罪、裏切り、欺瞞、破滅etc…テーマ性を重視した作りの印象。「悪夢の小路」そのままに、罪を重ね続け破滅の小路へと堕ちてゆく主人公。どんなに遠くへ逃げようとも、血塗られた宿命からは逃れられない事を悟った最後の台詞が、不憫でならなかった。また、イノクの使い所の巧さ。メタファーとして再登場させる事で、主人公に追い討ちをかける。

◉「こんなじゃないんだ…」
 「違うんだ…」
序盤に登場した獣人の台詞がふと甦る。
まさしく、世にも奇妙な物語。

◉この世界観が好きな方は、1932年製作の『フリークス』という映画作品がオススメ。本作よりもスリラー色強めな衝撃映像のため注意。
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