レインシンガー

ナイトメア・アリーのレインシンガーのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
4.2
他の作品群に比べて評価の低い投稿が多いようなのでちょっとでも平均点を上げたいと思いますが、これは傑作の部類ではないですか。何といっても1950年代の小説で、物語の設定や展開がいかにも古くさい。しかし、明らかにそれは作り手たち、特にギレルモ・デル・トロのねらいでしょう。ラストも含めて「ああ、そうくるのか」というしかない、一種の運命劇であり、因果応報であり、イヤミスですらあるわけですが、そういう「いや~な話」はいやだ、ということなら、それはしかたないけど、いや~な話としては最上の部類だと思います。とにかく、終盤になるまで、結局どこへ連れて行かれるのかが全然読めないし、主人公の本心というか、彼がどういう人物なのか、ということすら、なかなか明らかにならない。冒頭のシーンを上手く使って、そこに情報をほんの少しずつ加算していく、いわば「LOST」のような手口といいましょうか、そういう「あ、もうちょっとはっきり教えて欲しいんだけど・・」という観客のいい意味でのイライラを誘う語り口で、ズルズルとラストまで引きずられていく。終わってみれば、こうなるべくしてなった物語なのだけれど、そうなるまではまったくそんなこと思っても見なかった展開なので、引きずり回される力はたっぷり。主要キャラそれぞれの魅力もたっぷりで、150分は長いけど、それに見合うだけのお腹いっぱい加減。そしてやっぱり美術がすごい。装置もみごとなまでに作り込まれているし、何よりも構図が一つひとつ練り込まれ考え尽くされていて、総体としては、タイトルの通り「悪夢の小道」を主人公と共にさまよっていた、という印象。俺この世界にいなくてよかった、と心底思える、ギレルモ・デル・トロらしい傑作。まあオスカーは取れないけどね。(投稿時まだ結果は知りません)ブラッドリー・クーパーはもちろんいいけど、いつにも増してケイト・ブランシェットがいい。これもまた一種の魔女なんだろうな。
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