Yellowman

ナイトメア・アリーのYellowmanのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.8
闇の中の普遍性

前作「シェイプ・オブ・ウォーター」で、
ギレルモ・デル・トロ監督らしいクリーチャーを題材にしながらも、美しく、観た者の心を鷲掴みにしたファンタジーの傑作からの今作は、監督の家芸と言っていい、クリーチャーの創作物、超自然現象を封印した、ある男の滑稽な自ら迷い込んだ”小路”に追い詰められた話である。
タイトルが「Nightmare Alley」意味は、”悪魔の小路”だ。クリーチャーこそ登場しないが、序盤の舞台は、サーカスの見せ物小屋。
ここで、充分、異形たるモノ達が存在している。ブラッドリー・クーパー演じる主人公スタンが、読心術に興味を持ち、自ら読心術師となり、サーカスを離れ、ショービスの世界へと足を踏み入れる。そこで、調子に乗ったスタンは、降霊の力があると豪語。
元々、読心術すら、インチキなのに、降霊なんて、スタンの一人芝居だ。しかし、目の前の金の為、もはや、袋小路だ。

この作品の主題は、有りもしない能力で、人を騙す。ショービスのような大衆のいる前で、いわばプロレスの世界でなら許された“能力“を顧客相手に使い始めたのが小路から、因果応報へと転げ落ちる事になった男の顛末だが、こんな話はいくらでもあるということ。言葉巧みに近寄っては、相手の弱みにつけ込む詐欺師、本当に霊感があるか甚だ疑問の霊媒師、占い師などのスピリチュアル系の仕事で、生計を立てている人達にお金を使っている人がそれなりにいると云う現実。SNSの普及で、さらに加速してると聞く。
闇は深い。
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