キツネとタユタム

ナイトメア・アリーのキツネとタユタムのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
浮浪者が見世物小屋で雇われ、読心術を学び、それを利用し大金持ちになろうとする話。

ギレルモ・デル・トロ監督作品。デル・トロ監督として初めて超自然的フィクション要素が無く、奇妙な造形のキャラも出てこない珍しい作品。
全体的に物語どこに向かっていくのかが分からず、中盤まで観ても、これから何が起こるのか検討もつかない。それ程までに、場当たり的にシーンが展開した印象。
目的が何か分からないが、何故か目を離すことが出来ずに最後まで観てしまう不思議な映画。
どことなく不穏な空気がずっと流れており、変な緊迫感があるため、ノワールサイコスリラーとしてはとても良い出来。

「どんなに頑張っても運命は決まっている」という宿命論的な要素が語られ、何ともいたたまれない気持ちになる。
「自分の努力次第で運命を変えれる」と期待を持って生きてみたいと思うけど、結局行きつく先は定められているのであれば、空しい空回りをする羽目になる。
最近新しいことを始めようと思っていたので、少し気持ちが落ち込む。頑張りの数だけ成果に繋がって欲しいと思う。

ブラッドリー・クーパーは破滅の道を歩む人間を演じるのが好きなのだろうか。
監督と主演を務めた「アリー/スター誕生」があまりにもハマらなかったので、クーパーに対しては穿った目で観てしまうが、今回はとても良かったと思う。
何となく失敗しそうで落ちぶれそうな危うさはクーパー演技の賜物のように思った。
今作は女性陣がとても素晴らしい。ケイト・ブランシェット始め、ルーニー・マーラ、トニ・コレットがそれぞれ良いキャラ立ちをしており、観ていて飽きない。
何となく観てしまった理由は実はここにあるのかも…
トニ・コレットはヘレディタリーで存在を知ったが、その後にナイブズアウトや本作を観たので、顔芸よりやさぐれなイメージがついてきた。とても魅力的な女優さん。
ルーニー・マーラを観るのは初めての作品だったが、とても良くファンになってしまった。
ケイト・ブランシェットとW主演をしている「キャロル」も観てみたいなと感じた。

全てが最後のブラッドリー・クーパー演じる主人公の一言のための布石とも取れる映画。
そのラストの一言を聞いて「あーあ…」と感じ、主人公の今後や、ましては自分の今後までも考えてしまう映画だった。
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