よしまる

ナイトメア・アリーのよしまるのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.5
 2022年のブラッドリークーパーをもう一本。

 コメディからシリアスまでなんでもこなすだけに、コレ!という個性を感じにくいのが個人的に物足りなさの溜まる俳優さんだったけれど、本作に関してはそのことで逆にどう転ぶかがいい意味で見えづらくなってるのが良かった。

 もともとはディカプリオに出演交渉して断られたという経緯があるらしく、しかしこの役をもしレオさまが演っていたなら、もっと策略家の色が濃く、オレがオレが的なめんどくさい展開になっていたかもしれない。ま、そういうのはスコセッシにまかせておけば良いw

 とある重大な犯罪歴がある男が見せ物小屋に拾われたところから、憑依して霊視するいわゆる霊媒師(もちろんインチキ)として一発当てるという出世モノの体裁を取りつつ、嘘や犯罪を塗り重ねて自滅していくのかという、まあまあ古典的な物語。

 これをモンスターやロボットを登場させることなく、デルトロお得意のダークファンタジーとフィルムノワールの手法で丹念に描いているのが耽美で心地よい。

 このブラッドリークーパーならではの自堕落感を対照的に補ってくれるのがケイトブランシェットにトニコレット、ウィレムデフォー、リチャードジェンキンス、ルーニーマーラと役者揃い。
 最近「タイムアフタータイム」というSFを観たのでメアリースティーンバージェンが出ていたのが意外で嬉しかった。彼女も含めて、この虚構の世界を重厚で深い味わいに出来たのはまさしく演者の力によるものだと思う。

 あえて苦言を呈するとすれば、やはり長い。もう15分くらいは短くて良かったんじゃないか。時系列として大河的な長い物語でありながらさほど大きなトピックは無いのでどうしても中弛みが生じてしまう。

 アート性が高く、じっくりと世界観に浸ってほしいのはわかるけれど、運命に抗った男の生き様を語るほうに重きを置くのであればもう少し絞ってくれたほうがラストももっとグッと来たのに、何とももったいなく感じた。すでに評価の高まっている次作のピノッキオに期待!