レオン

ナイトメア・アリーのレオンのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
納得のギレルモタッチ。
この人の作品は何気ない通常会話シーンでも、
光の使い方や台詞の言い回し、BGM等で「陰」の雰囲気を醸し出していて、独特の余韻を残すのがうまい。
(タイトルのアリーは人物名かと思ったが、路地の「alley」だった。が本当は"アーッリィッ"と発音が全く違う)

さらに80年近く前の見世物小屋をおどろおどろしさを加味してうまく再現している。 ハリウッドは邦画の10倍以上の制作費が当たり前なので、当然と思うが、その時代を違和感なく見せるには美術スタッフの驚異的な労力と技術工夫を知るべし。

物語は主人公が流れついた見世物小屋を発端に、やや成功するロードムービー的要素から、自身のショーで精神医に出会ってからサスペンス要素が増す展開になり、そろそろ来たかと期待も増す。

とくに "感情がないのが性格" という様な精神医をブランシェットがうまく演じて、緊迫感がすごい。 この人の目はこういう冷血漢にはドンピシャ。 部屋のインテリアや、見たこともない録音機など細かいギミックにも注目。

そして主人公が逃れにくい深みへどんどん嵌まっていく中、最大のクライアントに出会い、最高の芝居を打つことになるのだが・・・。

なぜ、突発的なバイオレンスに逃げた?(シナリオが)
安易な暴力で、それまでの労力を一瞬に台無しにしてしまい、作品そのものをも、稚拙なエンディングに向かわせている様で、非情に残念に感じた。

機転が効く洞察力で生のショーでも、ピンチを切り抜けて来た主人公が、いきなりとち狂った様な暴漢になってはやはり違和感。
バッドエンドに向かわせるにも、脚本にもう一工夫の要因を加え、策士がその上を行く策士にしてやられたり・・を納得いく展開での顛末に期待したのだが・・・。

エンディングまでは★4ぐらいに感じた惜しい作品。
が、ラストで自身がギークに誘われるのは、ギレルモらしいブラックさがよい。

ちなみに2020年のアカデミー作品賞を取った「パラサイト 半地下の家族」も、ラストで突発バイオレンスに逃げた作品に感じ、私的には低評価。
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