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ナイトメア・アリーのひでGのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
4.2
このところ凡作鑑賞が続いたので、これはやっぱりレベルが違う!
YouTubeで映画評論家さんが「デル・トモの余裕しゃくしゃくの横綱相撲!」って仰っていたが、その通りの見事なエンターテイメント!映画の面白さがたっぷり詰まっている作品だなあと思った。

タイトルの「ナイトメア・アリー」は、「暗い細い道を迷い込んだ悪夢」みたいな意味。原作は1946年に出版され、すぐ翌年に「悪魔の往く道」として映画化されている。
これを鬼才ギレルモ・デル・トモが再映画化。前作では時代的に描けなかったかなり際どい映像も可能になっている。

魅力のある作品は、開始早々観客を画面に釘付けにさせる。
ある男が誰かを殺し、その場所を燃やして逃亡する。その男スタンが乗り込んだ列車がスタンを、そして観客を不思議な世界、悪魔の町へ誘う。
そこは、怪しい見せ物小屋だった。

映画は後半、スタンと恋人モリーと小屋を出て独立していくのだが、この映画全体が怪しい見せ物小屋なんだと思う。

小屋には、人か野獣か、鶏をそのままかぶりつく獣人や、人の心を読む読心術などどれもインチキ感が漂う怪しい見せ物ばかり。

この映画の面白いのは、それらの騙しのテクニックをどんどん観客の前に出して、騙す方と騙される方を同時に描くところ。
スタンが小屋で学んだ読心術を使ってのし上がっていく場面でもどう騙すのか、どう騙されるのか、この映画の最大の魅力だ。

誰もが予想する通り、見せ物小屋で読心術(騙す術)を学んだスタンはどんどんのし上がり、横柄になり、さらに名声を得ようとする。そして、騙す方が騙されて、転落していく。

この展開が何故か心地よい。スタンを演じるブラッドリー・クーパーは転落する人物がよく似合う。

彼の他にもそうそうたる大スターが脇を固める。ポスターにもなっているブラッドリー・クーパーを囲む美女3人。
ルーニー・マーラの他最初にスタンに騙すテクニックを教えたトニー・コレット。そして、後半を1人で持っていっちゃう存在感の王女ケイト・ブランシェット!スターの競演も本作の魅力だ!

見せ物小屋の行きずりの客のように、覗き込んだ見せ物にグイグイのめり込んでいくように、
あるいは、お話がまた戻ってくる劇中に出てくる回転木馬のように、
最後まで楽しく観ることができました。

ラストは怖いんだけど、「お見事!」と唸らせられます。サイコーのエンタメ小屋をご堪能あれ!
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