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ナイトメア・アリーのandesのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.7
原作や47年版の「悪魔の往く町」は未見。なので、この映画だけで考えると佳作の部類に入る出来だと思う。デル・トロのフェチを出しつつ、所謂「普通」の映画として体も守っている(この辺は良くも悪くもだけど)。
序盤の見世物小屋パートはデル・トロらしく禍々しくもファンタジックで、魅力的といえる。素性不明の男が「小器用に成り上がる」のは面白い。ブラッドリー・クーパーが微妙に小物感が漂う俳優なので良く合っている。原作は違うらしいが、因果応報を感じさせる伏線(獣人、奇形児、アル中)もいい感じに張っており、膝を打つ展開につながっている。あと、見世物小屋パート終了時、ランタイムはピッタリ60分なのは驚いた。終盤にかけては評価が分かれそうで、正直、没落するのは予想できるのし若干長く感じる。つまり物語としては予定調和。まぁ、その話自体は魅力的なので飽きないが、少しもたつく印象を受ける。ピート達の警告通りにドツボにハマるので驚きはなく、結末のみが気になるようになる。
この監督の性質上しょうがないかもしれないが、後半の「実社会」パートの魅力が薄いのは少し残念。どうしても失速感がある。あと、戦争が絡んでくるがイマイチ効果的とは思えず。時代背景の説明以上の意味はあるだろうか。
しっかりオチがあるので、納得ができる映画にはなっている。ただ、落ちぶれたスタンがあまり苦しそうに見えないのは気になる。前半がファンタジックなので余計に寓話性を強めてしまっている。あと、全編を通じて意外と「マイルド」な描写なのである。この辺はもっと思い切っても良かったのではと思う。
とはいえ、デル・トロがこの題材に惚れ込んだのはわかるし愛も感じる。
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