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無頼のmegurosのレビュー・感想・評価

無頼(2020年製作の映画)
4.0
WOWOW「W座からの招待状」で小山薫堂氏はこの映画について「主人公たちは何にも頼らずに”無頼”ということをまさに体現していた」...のような感想を話していらっしゃったが、自分の印象はむしろ逆。

登場人物の多くが語っていたように、彼らは幼い時に親が不在だったり、親族にも恵まれてこなかったりというその境遇から正業には就かず、ヤクザ稼業(=”無頼”)という生き方を選ばざるを得なかった。しかし、その生き方を選んだからには筋を通し、掟を守り、盃を交わして新たな家族を作り、オヤジのためなら命を賭けもする。友達の頼みには水臭えことは抜きにして全力で応え、親分には迷惑をかけんと指も落とせば、抗争で死んだ弟分を想って涙を流し、祝いの席では目一杯の感謝の気持ちを伝え合う。

そこには無頼という言葉が意味するとされる無法さや、頼ることが無いという文字面の意味は消え、”無頼”と呼ばれるヤクザ稼業の姿が真に肉を持って迫ってくる、そんな印象を受けた。

分かりやすい映画にしようとするならば、無頼とされるヤクザの前に、何も信じず誰とも繋がろうとしない一般市民代表の鬼畜を登場させてどっちが無頼じゃと構造化することもできたのだろうが、やや品が失われる気もするのでこの塩梅が正解だったのだろう。
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