kawaebi99

ファーザーのkawaebi99のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.0
アンソニー ホプキンスのラストシーンのセリフを聞いて涙が溢れた。もちろん感動の涙ではなく もっと別の感情から放たれた汗であって そしてそれが唇に流れ込んで涙の味が塩っぱいことを久々に思い出した。
認知症のかたの頭の中ではこういうことが起きているのだということを映像化した作品であり なおかつ傍観者側は それを暖かい目で受け止めるしかない作品であった。



私にはリアルに認知症の義母がいる。 わずかに残っている記憶と 時には妄想や思い違いなどの非現実がその隙間に入り込み そのグチャグチャに混ざったパーツだけを組み合わせて自分の存在を保とうとしているアンソニーの姿は 義母とオーバーラップしていた。
既に彼女の記憶の中に私は存在しておらず 何度会っても「はじめまして」という雰囲気から会話が始まる。もう「お義母さん」と言っても通じないから「〇〇さん」と名前で呼ぶしかないのだ。会話はいつも一方的に彼女の若い頃(彼女的には今現在の話題)の話しを繰り返し何度も聞かされ その年代がだんだん下がっていっている。 以前「〇〇さんはお幾つですか?」と聞いてみたら「二十歳です」と返ってきてその場にいた彼女の実娘たちを笑わせた。
そんなことを思い出しながら この映画のラストシーンのセリフに涙が溢れた。映像化してくれたアンソニー ホプキンスに感謝する。
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