鍋レモン

ファーザーの鍋レモンのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.7
⚪概要とあらすじ
名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。

ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。

⚪キャッチコピーとセリフ
“史上最高の演技”

「何が何だか分からない」

⚪感想
人間ドラマ作品。

終始胸の痛む作品だった。
ムズムズするというかもどかしいというか辛く痛く苦しい。

苦手なジャンルというかテーマだけど観てよかったと思う。
老いる人、介護される人、介護する人が観るべきと思うからみんな観るべき。どの立場になっても少し理解できる余裕がうまれるかも。

テーマを言えば認知症。
認知症を取り除いたら難解映画となってしまうような世界。

認知症を患う人、介護をする人、介護する人の家族などそれぞれの視点も細かい。
大好きな家族であっても、どんなに尽くしてもその存在を忘れられ、さらに病状が悪化していくのを見るのはどんなに切なく辛いことだろうか。本人が悪気がなく単にその日常の不可解さに言及しているのがなお切ない。

何が本当で何が偽りか。

アンソニー・ホプキンスの演技が凄い。
とにかく圧倒されてしまう。
個人的にアンソニー・ホプキンスとロバート・デ・ニーロは演技力トップだと思う。
嫌味なおじさん、優しいおじさん、お茶目なおじさんと変化。
目や振る舞い、セリフ全てにおいて演じている。

ほぼワンシチュエーションのような感じ。

観た人の数だけ違った解釈が生まれそうな斬新な映画だった。



⚪以下ネタバレ



報われなく終わってしまうし、これが妙に生々しく現実的だからより辛い。

何が現実で何が幻想か思い返せば思い返すほど分からなくなる。

アンソニーの住んでいた家はアンの家だと思うけど、途中で玄関から入ったら病院になっていたり、最後は自分の部屋が老人ホームになっていた。

アンの恋人も2人。
ポールは二人いたけど髪の毛が多い方が本当の恋人かな。後半結局老人ホームの介護人でビルとして出てきたし。でもなんか途中のアンソニーにビンタをするシーンが生々しくてどちらかが苛立ちから危害を加えていたのではと思ってしまう。

アンがアンソニーの首を絞めるシーンがあったけど現実に思えてしまって苦しい。アンソニーは覚えていないだろうし。でもはっとしてたからあれは夢か想像か。

アンが実はルーシーでって思えた。「リトルダディ」って呼んでたし。でもローラがルーシーが事故で亡くなったみたいなことを仄めかしたから違うのか。

解説や考察も読んだけどあんまりしっくり来ないし、自分がそう思ったものを信じるのが良さそう。

「全ての葉を失っていくよう」が名言。

ラストのアンソニー・ホプキンスの子供がえりのような演技に鳥肌。

⚪以下ストーリー(Wikipediaから引用)
アンは80歳になった父親、アンソニーに認知症の兆候が見え始めたのを心配していた。アンソニーにヘルパーを付けようとしたアンだったが、気難しいアンソニーは難癖を付けてはヘルパーを追い出す始末だった。しかし、アンソニーの病状は悪化の一途を辿り、記憶が失われていくだけではなく、自らが置かれた状況すら把握できなくなっていった。困惑するばかりのアンソニーは苛立ちを募らせ、アンに当たることもあった。アンはそんな父親を懸命に支えていたが、気力と体力は消耗するばかりであった。

⚪鑑賞
GYAO!で鑑賞(字幕)。
鍋レモン

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