こと葉

ファーザーのこと葉のレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.9
すごいわ…。脚本と演出に大拍手。演技もすごかった。
こういう見せ方ができるのが映画の好きなところだと再認識。

1回じゃわからない。のがこの映画のいいところだと思う。
時系列も、現実なのか追体験なのか真実なのか虚偽なのか定かでなく。
それに加えてところどころの意味深な長尺。蛇口の水とか風船蹴りする子どもとか。最後のモニュメントはわかりやすかったね。
部屋も毎回ちょっとずつ違うし。
こういう、画面の全てに意味がある、と思わせてくる作品が大好きなんだよ。
真実はきっと見て考えた人の数だけある。ただアンソニーにみえている世界はあまりにも理不尽極まりなくて、アンが感じた絶望はあまりにも大きい。

『全ての葉を失っていくようだ。
枝や風や雨 なにがなんだかわからない。』

腕時計、フラット(部屋)、太陽、葉っぱ。
腕時計は時間、フラットは場所の象徴。"いま何時か?""ここはどこか?"それが分からなくなることに対する不安が潜在意識の中にあり、それが執着となって現れているようだ。
太陽は人生を謳歌することの象徴。
人は、生まれて、老いて、死ぬ。それでも命は巡り、人生をつなぐ。命は生まれて死ぬ。当たり前のことの、なんと、切なく、悲しく、そして美しいんだろう。
壊れゆく意識の中で、それでも包み込む優しさと、光と風がある。

認知症だから物盗られ妄想、っていう事象として覚えるんじゃなくて「貴重ななにか(寿命)を失っている感覚」から生じる死への恐怖心のあらわれだと考えられる想像力があるかが思いやりへの一歩だよね。


ストーリー性 5/5 ×2
音楽 4/5 ×2
キャラクター 4/5 ×2
泣ける 3/5
笑える 2/5
考えさせられる 5/5
もう一度見たい+3
こと葉

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