このレビューはネタバレを含みます
認知症視点の場面では現実と妄想が混在しており、自分だけが奇妙な世界に迷い込んでしまったような感覚を抱く。
しかしその誰もがなりうる病気が見せる世界は、奇妙という言葉だけでは形容しがたい。
「もしかしたら自分も…」とか「自分の親も…」という、現実味のある想像が安易に出来るので他人事ではない。
娘視点での苦悩と悲しみもわかるし、その他認知症患者と関わる人間の不快感もわかる。
また視点の切り替えが曖昧に描かれているので、今は認知症の妄想なのか、それ以外の視点から見ている現実なのかが分からなくなってしまう。
患者もその周りの人間も、混乱の中生きているんだ…。
アンソニーにはどうか、ママを求めて抱きしめられたあの瞬間だけでも平穏を感じていてほしい…。
