たおぱお

ファーザーのたおぱおのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
4.2
介護の仕事してる人に観て欲しいと友人から言われたので視聴。

認知症の人の視点で、その世界が描かれています。
だからこそ、ちゃんと理解しようとしても辻褄が合わなくなって来ると思います。

今までも研修教材用のビデオで何度か、認知症の方の目線で作られた映像作品を観てきましたが、当たり前ですが学習用の物よりこの作品の方が物事の解釈が曖昧で、演技も自然で、リアルでした。

そして、研修用の教材ではあまりフォーカスされない、認知症の方を支えるご家族の悲痛なお気持ちも痛いほど伝わってきました。

介護士は、認知症の方の言葉をむやみに否定せず、その人の世界に入り込み、気持ちに寄り添って、その人に設定された場面に合わせた言動をしつつ、安全や心の落ち着きを確保出来る状態へ誘導していくのが、現時点において推奨されているケアの手法だと認識しています。

そしてそれは、他人だからこそ冷静に対処出来ることなんだとも感じています。

もし、これを読んでいるあなたの大切な人が認知症になってしまったとき、無理せず、プロに頼ってください。

映画中で、娘の元旦那さんに言われた否定的な言動が何度もフラッシュバックされ、不穏な言動を引き起こしていました。
認知症下では、不快な出来事から沸き起こった恐怖や負の感情が他の感情よりも強く忘れずにずっと残ると言われており、ふとしたきっかけでフラッシュバックを起こしパニックに陥るのを繰り返す方が多いです。

家族が面倒をみるべきだという価値観にとらわれ、家族だからこそわき起こってしまう負の感情の波に疲弊して、当事者へぶつけてしまう前に、遠慮なくその手を放すことが、結果として大切な人の心の安寧に繋がっていくということも忘れないで欲しいと、現場の職員としては思いました。

当事者だけが頑張らなくて良いんです。

社会みんなで協力してささえあっていけば良い。この映画をみて、その思いを再確認できました。
たおぱお

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