ぽん

ファーザーのぽんのレビュー・感想・評価

ファーザー(2020年製作の映画)
3.9
アンソニー・ホプキンスの認知症演技がヤバいとは聞いていましたが、想像以上にすごかった。
認知症高齢者の本人視点の映画なんですね。リサーチと監修がしっかりしてる印象。
レビー小体型認知症の場合だと、幻視ってあんな風にアリアリとオーセンティックに見えるって聞いたことがある。(本作では認知症の種類までは明言していませんが)
非常に興味深かったなーとVR体験に近い感慨が。

当事者目線っていう切り口の一点突破的な作品なので、だんだんパターンが見えてきそうに思えるが、けっこう手数があって成程そうくるかと、いちいち驚きながら観ました。失見当識(自宅と娘宅との混同)から始まって、徐々に理解力低下、記憶障害、妄想、作話、情緒不安定などなど、出てくる出てくる。それを本人はこういう風に認識してますっていう画で見せられるから、こちらも混乱しまくり。そりゃあ怖くもなるだろうし、疑心暗鬼にもなるよねーと。

分るんです、本人の苦しみは。分かるんだけど家族はたまったもんじゃない、ケアを一手に引き受けている娘の苦悩が私はいちばん刺さった。アン(オリヴィア・コールマン)と一緒に私も泣いた。
このお父ちゃん(ホプキンス爺)は元々が頭がよくてモラ臭のする嫌味なオジなんだもの。(絶対そう)
実父とカブりまくりでしんどかった。
本人も自分の異変に薄々気付いているから、それを相手に悟られまいと必至に誤魔化そうとする。そういう時の言い訳だったり保身のウソがまぁリアル。これはムキィィーッ!ってなりますよ。娘夫婦が自分の財産を狙ってるって妄想も全く同じで、いろいろ思い出して削られてしまった。せっかくの休日なのに何やってんだか。

そんな訳で。
色んな立場で、観る者に迫ってくるものがある(と思う)快作でした。

年寄り笑うな、行く道じゃ・・・。(ため息)
ぽん

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