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ラスト・シフトのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

ラスト・シフト(2020年製作の映画)
3.9
『扉をたたく人』の素晴らしい演技で大ファンになったリチャード・ジェンキンス。出演作は80作はあるのに他に1本も観たことがなく、主演は『扉をたたく人』と本作の2本のみ。名脇役なのでしょう。本作ではバーガーショップで38年間、深夜労働して退職する高齢の男性スタンリーの悲哀を演じています。少年犯罪を犯した者のやり直しのきかない社会、底辺から這い上がれない冷酷な現実を描いています。

スタンリーの後任は、少年院から仮出所したジェボン。スタンリーはジェボンの新人教育をしっかりしないと最後の給与がもらえません。ぶつかるスタンリーとジェボン。人種差別の問題、ジェネレーションギャップの問題、さまざまな問題が二人の間に浮かび上がってきます。

ジェボン演じたシェーン・ポール・マッギーの利発なこと。目の輝きが違います。作家に成りたいジェボンは議論や意見を主張し社会のいびつな仕組みについて書きたいと思っていました。

二人はうまくいくように見えますが…

リチャード・ジェンキンスの成りきった演技が本作でも神がかっています。








以下、ネタバレ。










1971年地元の高校で黒人を殺したが不起訴になったのはスタンリー。スタンリーは荒れた家庭環境の中、自分より下と思っていた黒人が権利を主張するのが許せなかった。貧しく恵まれない環境にいるのは自分のような白人でもおり、何一つ白人としての特権を受けていないと感じていた。

不起訴になったのは軽度の障がいがあったことと、時代は黒人に冷たかったからだろう。その後、ジェボンに保護観察がついたのと同じくバーガーショップの夜勤として真面目に38年間働いてきたが、自分の権利を主張することなく、ジェボンになぜ搾取されたままなのかを問われて初めて自分の置かれている状況に気づく。

スタンリーは売上金の計算をするにも時間がかかり、高齢のため、ミスも増えていた。

不良の若者たちがたむろすシェアハウスの狭い一室に住み、彼らに盗まれてはならないと、全財産をカバンに入れ持ち歩いていた。

銀行に預金しないのは、親族に盗まれると思っていたのか、あるいはそういう社会常識を知らなかったのか、または後見人がいないと金銭管理できなかった少年時代のままだったのか。

免許を持っていなかったのも欠格事由のためか、または免許証が身分証となり、本名を知られるのが怖かったのかもしれない。

ジェボンはスタンリーの哀れな人生を知り、自分がそこに堕ちないため、少年犯罪を起こした少年たちへの制度の不備と権利を主張する執筆をはじめた。
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