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フランクおじさんのSPNminacoのレビュー・感想・評価

フランクおじさん(2020年製作の映画)
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NYに住み知的に洗練された大学教授のフランクおじさんは、姪ベスの唯一信頼できる理想の大人。だが、大学に進学するまで彼がゲイとは知らずにいた。といっても、映画では家族内での扱いで早々に察せられるし、叔父さんのカミングアウト場面を劇的にすることはない。「ゲイの人に初めて会った」と言うベスに「会ってても気付かないだけ」だとおじさんは答える。舞台は70年代、まだ周囲の目を気にして自由に生き辛い時代。父の葬儀のため南部の実家へと向かうフランクとベス、叔父さんの恋人のロードムービーは、そんなヒリヒリした背景の中を進む。
人生は自分次第だと説く叔父さんにも父親から刷り込まれたスティグマ、長年背負った罪悪感という秘めた苦悩があり、姪は理想と現実、家族の本当の姿を知る。やはり時代設定のせいで描かれる悲劇はかなり辛い。叔父さんの再生をベスがアシストする役回りになるけど、献身的恋人ウォーリーこそ彼の守護聖人なんだよね(アラブ人である彼もまた家族とは生きられない)。
ゲイだけでなく女性への抑圧だったり、受け入れる家族の反応がそれでも無自覚に偏見があったり、ありがちな気不味さを意図的に浮き彫りにした部分がリアル。賢くもあどけないソフィア・リリスも良いけれど、眼鏡の奥に隠しながら隠しきれない、脆く切ない感情の迸りを演じたポール・ベタニー(久々に素顔を観た気が)がさすがだった。
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