TaiRa

フランクおじさんのTaiRaのレビュー・感想・評価

フランクおじさん(2020年製作の映画)
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アラン・ボール自身の経験に、彼が母親から聞いた父親の過去を掛け合わせた物語。

ゲイの伯父を持つ姪の視点で語られる自己肯定と居場所の獲得について。敬虔なカトリックの家庭や保守的な地元に居場所を見出せず、都会へ出て行った伯父と、彼の聡明で自立した姿に憧れる姪。この二人の関係性が穏やかで好き。伯父はインテリで優しく、同時に力強い言葉を投げ掛けてくれる。相手が少女でも子供扱いしない。「伯父と姪」という関係性がもたらす絶妙なバイブス。ポール・ベタニーとソフィア・リリスのビジュアル造形からして素晴らしい。そして何より伯父の恋人役ピーター・マクディッシが最高。アラン・ボールの公私に渡るパートナーであり、この映画でもベタニーを献身的に支えるパートナーを演じている。見た目クマちゃん系の恋人をちゃんと可愛く、セクシーに映している点が流石。彼がイスラム系なのもテーマ的に大きい。「僕の国では同性愛者は斬首刑か絞首刑だよ。そんなとこ居られない」自分の居場所を求めて故郷を離れた人たち。彼は家族を「みんな良い人」と説明するが、それでもカミングアウトは出来ない。ゲイが生きていく上での幸福と困難の両面を描き、それ自体がセクシャリティを問わず様々な人をエンパワーメントする物語になる。他人(家族も含む)に人生を振り回されるな、という言葉と並行して、他人の優しさに触れた時の喜びを描くのが大人なバランス。
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