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キネマの神様のTsutomuZのレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.1
松竹映画百周年でありながら松竹から追放された清水宏を描き、しかも小津安二郎と二人の作風を批判する山田洋次監督の脚本に笑った。それでも二人が作った松竹の作風に今作も落ち着くのはなんでだろうか?

労働争議全盛期の撮影所の再現が良い。監督の青春なんですね。若さが戻って永野芽郁の膝小僧まで撮る。小津安二郎の帽子を被って演じたのは山崎貴監督だったかあ。良く似ていた。もしかしてVFXで足してる?

「男はつらいよ」で阪神・淡路大震災を記録したので、コロナ禍新型コロナウィルスを撮りたいのはわかる。しかし被災地に寅さんが来るという映画の力で現実を書き換えたから、「男はつらいよ 寅次郎紅の花」は成立した。しかし今作はコロナ禍が映画に感染侵食し、それを跳ね返す映画の力が今作にないのは残念だった。しかも今作のオチは志村けんのこともあり、映画が現実に負けたとしか受け取れなかった。これでは映画の仏様でしかない。

志村けんへのオマージュとして作中のいたる所にチャップリンのポスターがあったのが救い。

沢田研二は志村けんが演じたであろう演技をしていたが「東村山」と歌い出した時にだけジュリー本人を感じ、二人の友情に泣けた。
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