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キネマの神様のradioradio526のレビュー・感想・評価

キネマの神様(2021年製作の映画)
3.8
「50年前の夢が再び動き出す…まさに和製ニューシネマパラダイス」

「キネマの神様」鑑賞。

助監督として映画の撮影現場で駆け回るゴウは、撮影所近くの食堂の娘・淑子や仲間の映写技師テラシンと共に夢を語らう青春の日々を送っていた。
しかし初監督作「キネマの神様」は撮影初日に大怪我を負ってしまい頓挫する。
大きな挫折を味わったゴウは撮影所をやめて田舎に帰ってしまう。
それから50年…家族にも疎まれるギャンブル好きで酒飲み爺ィに成り果てたゴウ。
そんなゴウの手元にかつて自身が手掛けた「キネマの神様」の脚本が戻ってくる。
50年間…止まっていた夢が再び動き始める。

沢田研二は京都が生んだ偉大なるアホンダラだ。
最大級の誉め言葉なんだが、そう聞こえないとしたら耳が悪いんじゃないか…。
若かりし頃の圧倒的なスターの才覚、歌声…そして終わることのない反骨。
爺ィになって見た目が変わっても沢田研二の本質はそのまんまだ。
(かつての名曲を様々な歌手がカバーすることでヒットした時期があったが、何度くらい「これを若かりし沢田研二に歌わせたい!」と思ったことがあるだろうか…)

今作における沢田研二は劇中のゴウを演じているのではない…間違いなく「ゴウを演じる志村けん」を演じている。
おそらく観た人は沢田研二の中に志村けんを見てしまうはずだ…まずそこに震える。
本当に代役は彼で良かった…他は有り得ない。
覚悟をもって代役をやると言った沢田研二は「あくまでも代役をやるだけ」ということで公開初日の舞台挨拶にも出ていない。コメントだけ代読されたが、その中に
「せんないけど志村さんのゴウが観たかった…僕は劇場の封切で初めて作品を観ます」という下り…華やかな舞台挨拶にも来ないでおそらく独りで劇場に足を運んだのではなかろうか。
うん…やっぱり沢田研二…である。

作品としては山田洋次監督らしい、実に映画愛に溢れて…誠実で丁寧な邦画の作風。
モデルになったであろう小津安二郎の世界観もまるで編み込むような感じで、そのカット割りの一部にもオマージュを感じさせた。
キャストも素晴らしかったが、中でも銀幕のスター桂園子を演じた北川景子が素晴らしかった。普通に美人さんだとは思っていたが、あの少し釣り目のキリッとした表情にカットがかかるとふわっと和らいで…往年の名女優の人間性というか…彼女も随分と昔の作品を観たんだろうな。
あとRADWIMPSの野田くん…最初気付かなかった。えぇ味を出してます。
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