踊る猫

Giving Voice(原題)の踊る猫のレビュー・感想・評価

Giving Voice(原題)(2020年製作の映画)
3.2
もちろん下らない内容のドキュメンタリーではないのだが……こちら側がオーガスト・ウィルソンについて知らなかったことがまずかったのかな、と思う。それは黒人が自分を表現するという、この映画のキモとなる要素に関して無知・無神経なまま鑑賞することに繋がるからだ。だが、オーガスト・ウィルソンについて語りたいドキュメンタリーなのか、高校生たちが演じることを通して自己を表現するその野心に迫りたいのか。どっちつかずなままにドキュメンタリーは進行してしまう。前者であるなら演劇に関して無知な観客にももう少し平たく基礎知識をまとめた映像を観せて欲しいと思ったし、後者なら登場人物を絞って彼/彼女が演劇を通して成長する様を観せるべきではなかったか(もちろん、「ヤラセ」を行えと言いたいわけではない。そんな小賢しい手法を取らなくとも彼らの成長は明らかなはずだ)。結果として、「自分自身であれ」というこのドキュメンタリーの骨太なメッセージが霞んでしまう出来になってしまったのではないか……と思う。主張には同感なので、その「どっちつかず」が余計に口惜しい。
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