1980-90年代にかけてイギリスから世界を席巻したインディーズレーベル、クリエイション・レコーズを創設したアラン・マッギーの話。
トイレ、ゲロ、ヤク中……「トレインスポッティング」の制作陣が全面的に携わり、アラン・マッギー役を「トレインスポッティング」でスパッドを演じたユエン・ブレムナーが演じたこともあって、出てくるアイテムがどれもトレスポっぽい。そういうのが好きな人には堪らない内容だし、クリエイション・レコーズのこと知ってる人は絶対に観たほうがいい内容だった。
父親に勘当同然の扱いを受けグラスゴーを飛び出しロンドンへ移住したアラン・マッギーは、国鉄職員の仕事をなげうってクリエイション・レコーズを設立。ギグで偶然見つけたTVパーソナリティーズと契約したのを皮切りに、ジーザス&メリーチェーン、ティーンエイジ・ファンクラブ、プライマル・スクリーム(偶然にも中学の同級生)といった、当時のUKロックを引っ張るバンドを次々に発掘する。
クリエイション・レコーズ、個人的にも思い入れの強いレーベルなのだが、あまり詳細なことを書いてもキモオタの便所の落書きにしか思われなそうなので割愛。ただ、当時のクリエイションの曲がこれでもかとなり続けてて俺得すぎた。内なる光が太陽よりも高く自らを導いてくれる……そんな感覚。
当時を再現しているシーンで、いろんなバンドのメンバーが出てくるのだが、後述する一名を除いて、ほぼ遠景か、斜め後ろから撮る……みたいに工夫してある。なので、再現フィルムだと分かっていても、それほど違和感を感じさせない。
……後述する一名を除いて。
全面的に、当時の音楽を知ってる人だとクスッと来るシーンが多い。何ヶ月もスタジオに籠もるマイ・ブラディ・バレンタインのケヴィン・シールズとか、「ジョニ・ミッチェルとキャロル・キングに憧れてるので、あなたのレーベルに入れてくれない?」と色仕掛けしてくる女とか(クリエイションの曲聴いてたら絶対そんな発言は出ない)。中でも、「キミはブラーとスパイス・ガールズと仕事してるんだって?」と真顔で聞いてくる政治家のエピソードはヒドすぎて笑える。政治家がクズなのは、日本もイギリスも変わらない。
あ、途中日本人のグルーピーが出てきてティーンエイジ・ファンクラブの「What do you do to me」で踊ってるシーンがあるけど、こないだ「英国音楽」の本読んだので、その界隈の感度の高い人達が集まってきてたのかなーって想像する。俺的には「パートタイムパンクス」で踊り狂うシーンと並んで好きなシーン。
さて、「U2を超えるバンドを見つけたい」という夢を持っていたアラン・マッギーが、仕方なく出かけたグラスゴーでのギグ。
そこで偶然出会ったのが、ノエルとリアム・ギャラガーの兄弟が率いる、まだ無名時代のオアシス。
一聴してアラン・マッギーは彼らの才能を見抜き、オアシスは凄まじい勢いでスターダムへと駆け上がることになる。
リアム役は、リアム本人がオーディションで選んだらしく、大柄で雰囲気もあって、悪くない。
問題はノエル。
どうみても……皆川猿時にしか見えない。
しかも、これが想像以上に皆川猿時。ノエル成分ゼロの皆川猿時。
しかも他のアーティストみたく1シーンだけの登場ではなく、アラン・マッギーが政治に傾倒して、トニー・ブレア首相の応援演説をノエルに頼む、みたいなシーンにまで出てくるので
「あっ、また皆川猿時が出てる!」
って気持ちになって、集中を削がれてしまう。
「オアシスのメンバー、アラン・マッギー、そしてトニー・ブレア、ありがとう!」
と大観衆の前で演説する皆川猿時……もはや軽い悪夢でしかなかった。ってか、もはや後半は
「いっそのこと、皆川猿時に演じてもらえば良かったんじゃね?」
と思ってしまった俺だったぜ。
皆川猿時と言い過ぎたので、最後に、俺の好きなノエルの名言を載せとく。
「スーパーのレジが混んでる時は、仕返しに万引きしている」
「スペイン人観光客に『写真撮ってもらっていい?』と言われて『良いよ』と答えたらカメラを渡された」
「福岡は地名にファック(FUK)が入ってるから好き」
福岡出身の俺も、お前のことがファッキン大好きだぜ。また日本にも来てくれよな!
(おしまい)
【追記】
この記事の米国Pitchforkの「90年代のベスト・インディー・ポップ・アルバム 25選」、めっちゃわかりすぎて、Pitchforkの編集者とは酒を酌み交わしたくなった。半分以上持ってるわ……。
https://amass.jp/161997/