かささた

チィファの手紙のかささたのレビュー・感想・評価

チィファの手紙(2018年製作の映画)
3.6
僕は岩井俊二監督作品の「ラストレター」を観たときに何も知らなくて監督の過去作品「ラブレター」と対になるような作品なのかとか勝手に考えていましたが、実はこの「チィファの手紙」こそがまさに「ラストレター」の双子の姉妹のような作品だったんですね。ラストレターの公開に先立つ2年ほど前にこの映画は中国で作られて公開されていました。どこかラストレターの原型になる作品なんだろーなーと思っていましたが、ほとんど同じ作品と言っていいくらいに骨格はそっくり同じ、つまりセルフリメイクなのでした。
しかしなーこの映画を観ながら、観終わったあとに、「骨格はそっくり同じ」なんて言い切って良いのかどうか迷いました。筋書きは確かに同じなんですが、全く別の作品とも言えると思ったからです。

勿論ラストレターの方は知っている俳優ばかりで作られていますから既視感が前提となっているというか、僕は中国の映画に詳しくないので、チィファの方が俳優を俳優として見ないですむ分リアリティはあるんです。でもそれだけじゃなくて、音楽がラストレターは小林武史が手掛けているのに対してチィファは岩井俊二本人が手掛けています。それが何と言うかしっとり聴かせる音楽なんですよ。全体としてラストレターの方がコマーシャルな作風でチィファがリアルな作風だと感じました。季節もラストレターが夏でチィファは冬なのですが、寒々とした空気が中国のロケーションにすごくマッチしているんです。つまり雰囲気が違うんですこの二つの作品は。映画にとって雰囲気くらい大切なものはありませんから、この二つは同じように筋書きを持っているのに違う世界で起こった違う出来事のように感じてします。

とこのように比較されることを免れない二つの映画なのですが、たまにはそんな作品もあっていいとか思ってたら岩井俊二は韓国でもこの二つの作品の原型となる短編映画をペ・ドゥナ主演で撮っていたらしいのです。これもいつか観てみたいと思います。
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