あき

コレクティブ 国家の嘘のあきのレビュー・感想・評価

コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)
4.5
”この火は演出じゃない!”
混乱を極めるライブハウスの火災現場と、身体に激しい火傷の痕を残した女性や熱傷の治療を施されず蛆が湧いたまま放置され死亡する患者の生々しい姿。
それは”作られた”映像ではなく、すべてリアルである衝撃。
2015年にライブハウスで起きた火災から明るみに出たルーマニアの公的医療の不正、汚職と政治家が絡んだ悪政を追うドキュメンタリー映画。
とてもドキュメンタリーとは思えないほどスリリングな展開に息をのむ。
後半は悪政を認めず正しいことをなそうとする大臣を丹念に追うが、
既得権益を打破し、人命のため国のために痛みを伴ってでも軌道修正を図ろうと試みる改革も、
既得権益の現状維持を求める政党による世論誘導によるバッシングを鵜呑みにした国民は、目の前の痛みを見せずに済ませてくれ、結局は耳に優しい言葉とうまい話を唱える政党を選挙で第1党に選択し、大臣は失脚する。
”ぼくのやってきたことは、少しでも残るのかな”
そう力なく呟く大臣の姿に、そして国家に屈せず真実を伝えようとメディアがどんなに懸命に奮闘しようとも、人々の求めているのは本当の正義なんかではなく、面倒なことに目を背けさせてくれ、なにも変わらない毎日を欲することでしかないという虚無感に沈む。
”ヒーローなど、どこにもいない”と突然終わる希望もなにもないエンディングに気が滅入るそれは、国は違えどそれはどこでも同じなのだと思い知る
あき

あき