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コレクティブ 国家の嘘のsnowのレビュー・感想・評価

コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)
4.5
今まで見た中で1番心を動かされた映画かもしれない…色々な意味で…

見始め、ルーマニアの医療体制そのものが崩壊している事実に対しては「こんな状況なのか、酷いな」とどこか他人事のような気持ちも湧くが、
映画が進み、新大臣が医療体制自体、そして政治の腐敗や社会そのものを変えようとしてもそれが簡単にできない“現実”が描写されると、国の違いを超え、まさに今自分が生きている社会そのものを見ているのだなと、絶望的な気持ちになった。

ヴォイクレスク大臣が医療行政をなんとかしようと試行錯誤する裏側とその報道のされ方がありのままに描かれていく辺りからとにかく引き込まれていった気がする。

選挙の開票がテレビで流れるシーンは先日の衆院選を思い出したりも…

政治の世界において、不正や汚職などが横行している、腐敗している事実があるにも関わらず、それが無くならないのは、もちろん見えないところで莫大なお金が動いているからというのはあるが、
根本的に政治に対する信頼や関心を失ってしまった国民、情報の正しさを判断する力のない国民が多いのも一つ理由としてあるのだとヒシヒシと感じる。
謎の論点すり替え肺移植話が出てきちゃう感じとか。

トロンタンのジャーナリスト達の姿は今の日本のマスコミには見えない“責め”があって「いいぞ」と応援しつつ見ていたが、
ヴォイクレスク大臣という実際に医療政治の舵をとれる立場に立った人でさえ現状を変えることができないのだから、マスコミという“情報を伝える”立場では出来ることに限りがあるのだろうとその限界も感じた。

今、自分にできることはあるのだろうかと
考えてもただただ無力感を感じてしまう。

映像編集には一般大衆受けするような「わかりやすさ」「冒頭からの引き」はないが、見れば見るほど引き込まれ、突きつけられる現実に圧倒的絶望感を感じさせられる…
とにかく力のある作品だった。

2023.2.23 再視聴。やはり素晴らしい。
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