空海花

コレクティブ 国家の嘘の空海花のレビュー・感想・評価

コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)
4.5
以前から気になりまくっていて、絶対見逃せないと思っていた作品。
間に合って良かった~😂


2015年10月、東欧ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”で実際に起こった火災事件を発端に、
製薬会社や病院、長期政権に連なる癒着と腐敗の真実が暴露されていくドキュメンタリー。

火災の映像が残されており、
あっという間に広がる火の手、
会場には非常口がなく、たった一つの出入り口に人が殺到する阿鼻叫喚に戦慄する。

─と思えば、事件は助かって入院した人達が更に多く亡くなる事態に発展。
これに不審を募らせたスポーツ紙の編集長の地道で実直な調査をカメラが追う。
彼らが行き着いたその理由とは?
…その背景まで衝撃的。
医療と政治、ジャーナリズムの問題は各国共通とはいえ、現在の話なのかと疑いたくなるほど。
こんな病院に居たら私はとっくに死んでいる…
命を脅かされてまで魂を忘れない姿勢には、感動より先にショックばかり。
「メディアが権力に屈したら、権力は国民を虐げる。それがこの国と世界で繰り返されてきたことだ」
ドキュメンタリーでありながらアカデミー賞のルーマニア代表として選出され、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たしたほか、世界各国の映画祭で28の賞を獲得した。
監督はアレクサンダー・ナナウ。

一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。
彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘、その30代の新大臣を追う。
打合せも含めた活動も逐一ドキュメントされているので驚くが、監督が一人で撮影することを条件に、大臣から撮影許可を得たとのことである。
その姿勢に希望を抱くが、選挙結果に愕然とする。

光を見せられては、底に落とされるような揺さぶり。
観ている方も立ち直れない。
鑑賞後の暗澹たる気持ちは形容できない。

しかし全編のなかに現れる、火災被害者の女性は、火傷で失った髪や指を隠さずアートとして被写体となる。
その姿の存在は常に光輝いており
天使のように私の心を照らした。


リアルな『スポットライト 世紀のスクープ』とも評される本作。
だが受ける衝撃はそれを遙かに超える。
今年絶対観てほしいドキュメンタリー作品といっていいだろう。


2021レビュー#202
2021鑑賞No.441/劇場鑑賞#89


映画館またちょっと久々。2週間ぶり。
あ~キネマ旬報落ち着く。家より落ち着く(笑)
空海花

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