ふたーば

コレクティブ 国家の嘘のふたーばのネタバレレビュー・内容・結末

コレクティブ 国家の嘘(2019年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

『画家と泥棒』が人間という生き物の不可解さがもたらす困惑がテーマなら、こちらは人間社会の理不尽がもたらす圧倒的な絶望感が主題である。

とんでもない腐敗とそんな状況でも平気で嘘をつきカネをもらう人間の醜さに辟易させられつつも、それとは全く逆に、強い意志をもって立ち向かっていく人もいる。その事実に心が揺さぶられるし、結構やればできることもあるんだなぁ……なんて思っていたら、終盤でものすごい足払いを食らって頭から地面に転ばされる。アルジェのえげつない女性差別を描きつつ、最後の最後に灯った希望が見事に潰される様を描いた映画『パピチャ』のもたらす絶望にも通ずるものがあるが、この「なにをやってもどうせ無理」という結末がこちらに与える心理的な徒労感はなかなかすごい。日本はここまでではない、と言いたいけれども、果たしていつまで社会がある程度信頼のできるものとして維持できるだろうか?と考えるとつらいものがある。

その上で、やっぱり最初に思ったこと、すなわち「やれば結構できるじゃん」という薄っすらとした期待を社会にちゃんと持つことが大事なのではないかと思った。多分、社会の一定数以上の人が「なにをやってもどうせ無理」な状態になってしまったら、本当にどうにもならなくなってしまうのだろう。そういう意味で、社会がこうあってほしい、こうでなければならないと訴えることは大事だし、また聞いてもらう努力もすべきなんだと思う。某バスケ漫画のセリフではないが、手遅れというのは手遅れだと思うことそのものなのかもしれない。

なのですごく面白かったし色んな勉強になった部分もあったのだけど、ちょっとした興味本位で見始めると強烈な顔面パンチを食らうことになるかもしれないので、おすすめできるかというとあんまりできない。『パピチャ』もこの映画もきっかけは藤原帰一先生の紹介によるのだけど、マジであの人の良さそうなニコニコ笑顔の下には強烈なサディストの一面が隠れているのでは?と思う瞬間がたまにある。それくらいの劇薬でした。
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