淡々と、誠実に、現実をそっと映しているだけなのに。
なのに、それだけでこんなにも胸が締め付けられるのはこの世界が地獄だからか。
ショービジネスの裏側に暗い世界が待っていることは、誰だって少しは想像がつく。主人公のジェーンだってある程度は覚悟していたはずだ。
でも、事実はそんな想像の上でも下でもない。想像から少しずれたところに現実の忌々しさは存在している。誰かのせいで追い込まれるんじゃない。全てのちょっとした絶望が積み重なって疲れるだけだ。だからいつからか、人は誰かを責めることを忘れ、自分を責めることに夢中になってしまう。
日々生きていくうえで溜まる疲れを無視して、無痛状態を手にした人だけが会社という組織で働いていける。自分の正義にいちいち正直に反応していては、会社員は務まらない。
子どもの頃、みんな普通に生きていれば、普通にサラリーマンになれると思っていた。大人になって気付く。みんなができることじゃない。
何かに耐えることが、社会で生きていく為の当たり前じゃなくなるように、お互いもう少し気を遣って生きていきたい。メンタル強くなくたって、この世界で生きてていいんだって。そうなったらどれだけいいだろう。