アシスタントのカルダモンのレビュー・感想・評価

映画製作・配給会社でアシスタントとして働く女性の1日。と書いてしまうと華やかで夢や希望が溢れているように思えてしまうが、ここで描かれるのは真逆の世界、職場における目に見えないハラスメントの数々だというのが夢も希望もなくて嫌になる。

グレーでマットなトーンと極端に説明を省いた描写は退屈。しかしそれはむしろ彼女の心理状態を象徴するかのようで空恐ろしくもある。悪意半分ふざけ半分の始末に負えないクソ人間共には憎しみしか湧かないが、しかしどういうわけか私は主人公に対してさえ寄り添うような感情が起こらなかった。理由はよくわからない。彼女のリアクションに中途半端なリアルさを感じてしまったからなのかもしれない。あるいは私の感情読み取り装置がイカれてるのかもしれない。画面越しに彼女のそばで冷たく傍観する視点。画面の向こうの彼女になにひとつ出来ない自分。

余談
かねてより本作の初期ポスターデザインを担当していたPOOLの絵が割と好きで、のっぺらぼうで冷たい無関心感、または匿名性がこの映画が表しているトーンと非常によく結びついていたなと改めて思いました。なんならPOOLの絵をそのまま動かしたのっぺらぼうアニメーションだったらどうだろう、と妄想。