和桜

ライムライトの和桜のレビュー・感想・評価

ライムライト(1952年製作の映画)
3.9
どれだけ有名な道化師でもメイクを落とせばただの人。落ちぶれたかつての人気道化師を、晩年のチャップリンが素顔を晒して演じきる。
衰えを感じながら夢を追い続ける老人と、才能を秘めながら自殺未遂を起こした女性。ありきたりな構図に序盤こそ説教っぽさを感じるが、その立場を徐々に入れ替える事でこれまでのチャップリン作とはまた違う。アメリカでの最後の作品。

他人への言葉はいつか自分に返ってくる。世間一般で諭されるこの教訓は、誰かを貶めるネガティブな言葉だけでなく、励まそうとするポジティブな言葉にも当てはまる。
今作でも女性を元気づける言葉が、中盤になりそのまま主人公へと返ってくる。しかし、この作品はその愛情と献身が時と場合によっては一層の孤独や苦痛を与えてしまう事を何度も語りかけてくる。これはキャプラやチャップリンが築いてきた古き良きヒューマニズム映画の幕引きのような、時代的な背景も相まって哀愁漂う切なさを強く感じてしまった。

「観客は好きだが信じられない。個人としてはいい人達だが、集団になると頭のない怪物で、どっちを向くかを知らず、どの方向にも向けられる。」
チャップリンと言えば名言やユーモアな機転の数々だけど、今作は自身のキャリアや境遇から本心とも取れる言葉が多く、特にこの言葉が好きだった。
和桜

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